常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

muddy waters

本日のDY(09/15/10付け)から英語の落ち穂を拾います。記事は7面BUSINESS欄にあった見出しです。
Kan’s win muddies waters for stock, financial markets
今回焦点をあてた表現は“muddy waters”です。muddyはmudの形容詞形なので「泥だらけの;ぬかるみの;泥で濁った」といった形容詞として使われることが多いようです(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。しかし,ここでのmuddyは動詞として用いられていて「1(手・靴など)を泥だらけにする 2[比ゆ的に](頭・考えなど)を混乱させる」とありました(『スーパーアンカー英和辞典』同上)。同辞書にあった用例として“muddy the waters[issue](事態を混乱させる)”というのがありました。菅首相の勝利が,株や金融市場に混乱を招くだろうと同紙は伝えています。
そして,この表現のもう一つのポイントはwaterが加算名詞になっている点ではないでしょうか。私の記憶が正しければ,高校時代の英語の先生は「水は不加算だから複数形sはつかないぞ。加算にしたければ容器にいれてa glass of waterのようにしなさい」とおっしゃっていました。先生は間違ったことを教えられていたのでしょうか。そこで,辞書を開いてみると謎が解けました。辞書には「[〜s](海・川・湖などの多量の)水,満々たる水;《文》海,川,湖」とあったのです(『スーパーアンカー英和辞典』同上)。確かに,普通の水は通常不加算名詞ですが,多量の水,もしくは文学作品に登場する水はwaterを複数形にして用いられるようです。このことからも菅首相が選挙に勝ったことで濁った水(混乱)は広範囲に及んでいることが自然と予想できます。(ゼミ生 camel)