常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

No side(解答)

小山本先輩の質問に回答したいと思います(http://d.hatena.ne.jp/A30/20100914/1284475232)。
確かに“No side”というフレーズはラグビーから来た表現です。実際私がラグビーの試合に出場した時,試合終了を知らせる合図は長く吹かれる笛の音とレフリーの「ノーサイド!!」というグラウンドに響き渡る声でした。
一つ目の質問は「なぜラグビーでこの“No side”というフレーズが言われるようになったのか」です。結論から申し上げますと“No side”と言われるようなった起源はわかりませんでした(小山本先輩申し訳ございません)。ただラグビーは紳士のスポーツとされています。“No side”は「試合終了」を告げる合図ですが,同時に 勝ち・負けをつけずにお互いをたたえるという意味もあります。まさしく常に平等でフェアーなプレイを心がけるその姿は紳士の精神のあらわれではないでしょうか。“No side”はこのようなジェントルマンスポーツの発想から生まれた表現だと考えられます。もしかしたら“No side”から紳士的なイメージが発生したかもしれませんが,どちらが先なのかは定かではありません。
二つ目の質問は「なぜ菅総理の発言では“no sides”のように複数形になっているのか」です。確かにラグビーでは必ず単数形で「ノーサイド」と言います。本日のDY(09/15/10付け)でも内容を確認してみましたが,やはり菅総理の発言は“As we promised, there are no sides now.”と英訳されていて,sideは複数形となっています。辞書でsideを確認してみると「(競技・争いなどの)味方,側」というのがありました(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。同辞書に“the winning[losing] side 勝った[負けた]ほう”という用例も一緒に載っていました。試合に勝ったサイドと負けたサイドの2つのサイドが発生するので文法的には“No sides”が正しいと判断できそうです。しかし,使われていくうちに複数形を示す-sが取れて簡略化され“No side”という表現が生まれたと考えられます。
このように非文法的であるが認められているケースはいくつか存在します。例えば,there isの後に複数名詞がくることは非文法的ではありますが,時たまネイティブの間では使われることがあります。ただ何故sideの複数形-sが取れたのか具体的な根拠は見つけることができませんでした(小山本先輩再度お詫び申し上げます)。決定的な答えにたどり着けなかったのはラガーマンとして恥ずかしい限りです。浅学な自分の推測にすぎないので,もし解釈の間違いなどがあったら指摘していただけると幸いです。(ゼミ生 camel)