常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Jams tomorrow

Mail Onlineを読んでいたら、見出しに引っかかる英語表現があったのでご紹介したいと思います。
Jams tomorrow, jams yesterday (and probably jams today): The UK's most snarled-up stretches of road are revealed
どこかで読んだことのあるフレーズです。おそらくルイス・キャロルの児童小説のクラシック『鏡の国のアリス』(Through the Looking Glass and What Alice Found There, 1871)の登場人物である白の女王様の台詞からの引用でしょう。引用元は、"The rule is, jam tomorrow and jam yesterday, but never jam today."「だって、規則ですもの。明日と昨日のジャムはある。でも、今日のジャムはありえないわ」(拙訳筆者) という台詞だと思われます。ここでは、jamという語がラテン語のiam (now)に掛けて使われており、これは英語でthenやnowといった意味です。ちなみに現在の英語表現としてのjam tomorrowは「当てにならない先の楽しみ」(『オーレックス英和辞典』初版、旺文社)という意味になります。
以上の『鏡の国のアリス』の台詞を踏まえて改めて見出しをみると、このjamはtraffic-jamの意味ですから、強調箇所は「明日と昨日も渋滞(そしてたぶん今日も渋滞)」と訳すことができると思います。以前にも読んだアリス・シリーズですが、これを機にもう一度読み返したくなりました。地口やブラック・ジョークなど面白い表現がたくさん出てきますので、6月のどんよりした天気の中で、頭の体操になりそうです。(Othello)