常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

push the envelope

今回はTHE DAILY YOMIURI(7/8/10付け)から英語の落ち穂拾いをします。
一面のINSIDEの欄に興味深い英語表現がありました。以下はTHE DAILY YOMIURI(7/8/10付け)からの引用です。
Pushing the envelope
Stand-up Chinese comic Zhou Libo pushes the boundaries as he ribs officials, celebrates wealth and extols superiority of Shanghai.
今回注目するのはpush the envelopeという表現です。『ジーニアス英和辞典』(第4版,大修館書店)によると,「限界に挑む」とありました。しかし,なぜ封筒(envelope)を押す(push)するとそのような意味になるのでしょうか。そこで,The Phrase Finder(以下TRF)というサイトで調べてみると,Journal of the Royal Aeronautical Society(1944)で使われたのが始まりであると言われています。第二次世界大戦中,アメリカでは戦闘機の加速力や上昇力などの性質のことを”flight envelope”と呼んでいたそうです。よってここでのenvelopeは「安全運行範囲[領域・限界]」の意味です(英辞郎on the WEB)。そして1978年にはAviation Week & Space Technologyという雑誌でも使われ,以下が当時の英文です。
"The aircraft's altitude envelope must be expanded to permit a ferry flight across the nation. NASA pilots were to push the envelope to 10,000 ft."
「(当時)安定飛行のできる限界高度を上げなくては,一回の飛行でアメリカを横断することは不可能であった。それはつまり,機体を地上1000フィートまで上昇させなければならなかったということである。」(persimmon柿生試訳)
その後,Tom Wolfeがその著書The Right Stuffでpush the envelopeを用い,「限界を超える」という意味で一般的に使われるようになりました。(ゼミ生persimmon柿生)

cf. http://www.phrases.org.uk/meanings/push-the-envelope.html
cf. http://d.hatena.ne.jp/A30/20100707/1278503926