常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

note and virtuoso

アントニオ・ストラディバリが制作したヴァイオリンの名器はオークションで11億などの値段が付くことがあります。わたしは録音した音源でしか、その名器の調べを聴いたことはありませんが、それでも素晴らしい音色に心を打たれました。しかし、巨匠の作った楽器だから素晴らしいという訳ではないようです。今回はThe Guardianの記事のタイトルから英語表現を拾いましょう。

How many notes would a virtuoso violinist pay for a Stradivarius?
Study finds musicians cannot tell from sound alone whether they are playing an old classic instrument or one made last week

今回は英語表現を2つ拾います。最初に赤字で示したnoteです。最初「音符、旋律」などの音楽用語で使われているのかと思いましたが、どうやら違うようです。辞書で調べてみると、第4版『ジーニアス英和辞典』の第5義に「〈約束〉手形;《英》紙幣」の意味があることがわかりました。もしかしたら、「音符」の意味合いのnoteに掛けているのかもしれません。また。How much〜ではなくHow many notesという言葉を使っているところが、ストラディバリが名器であり、億を超える値が付くことを読者に想像させるでしょう。

続いて赤字で示したvirtuoso。明らかに借用語であることがわかります。virtueに形が似ているので「徳が高い、素晴らしい才能のある」のような意味であると予測しました。そこで辞書で調べてみると、第2版『リーダーズ英和辞典』では「名人、巨匠;名演奏家、ヴォルトゥオーソ」とありました。つまり「才能があり卓越した巨匠のヴァイオリニスト」という意味合いで使われていることがわかります。

また、virtuosoは、CD-ROM版のLDOCE4th Eds.によると、やはりイタリア語からの借用語であり、17世紀から使われているようです。さらに、virtuosoの語源は、ラテン語のvirtusです。University of Notre Dameのラテン語のオンライン辞書で意味を調べてみると“manliness; excellence , goodness, worth, virtue; bravery, courage”という意味であるとことがわかります。virtusは本来「男らしさ、素晴らしさ」などを表す言葉だったのが、virtuosoという言葉になったときに、語源にあった意味が強調されたのだと考えられます。ちなみに、virtueの語源もvirtuosoと同じvirtusです。

記事に戻れば、「才能があり卓越した腕前を持つ巨匠のヴァイオリニストはストラディバリにいくら積むのか」という意味になります。余談ですが、楽器の値段や価値は、楽器の音色を左右しないというのが、わたしの持論です。たとえば、わたしがスティーヴ・ガッドと同じセットを叩いても、ガッドと同じ音は出ません。すべては経験と腕前が物をいうと思っています。(Othello)