常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

福島プランの成果

先日の記事にもあったように日本英語教育史学会第26回全国大会(秋田大会)に参加してきました。今回は田邉先生と共同研究という形で発表してきたのですが,写真を見た後輩のPersimmonくんから,「小山本さん,寝ているところしか写っていませんが…」というメールがきました。一応ちゃんと研究していることを証明するために,今回の発表の一部分を紹介します(こうして要点を整理させてもらいます!)。

私の研究分野は英語教育史です。なかでも旧制福島中学(今の県立福島高校)で戦前に行われていた実践,通称「福島プラン」について調べています。この福島プランは約200年におよぶ日本の英語教育の歴史の中で,「成功」した数少ない実践の1つとして知られています。昭和5年〜11年というわずかな期間でしたが,oral,受験の両面ですばらしい成果を挙げ,当時,一世を風靡しました。
【福島プランの成果】
まず,oralについてですが,昭和8(1933)年10月17日に東京の一橋講堂で英語教授研究大会第10回大会が開催され,その実践の評判から,福島中学は公開模擬授業を依頼されます。模擬授業の中で生徒は教師の速い(nativeの倍くらいだったといわれています)英語の質問にも即座に英語で答えていたそうです。また,
At a later hour, Mr. P. Russo and Mr. H. E. Palmer in turn submitted the pupils to original tests of their own. The result of these showed conclusively that these lads had acquired the skills of immediate understanding, and prompt and accurate response. The only time when they were disconcerted for a moment was when they were asked the trick questions: “Which is the fifth season of the year?” But after a short pause came the response: “There is not a fifth season.” (“The Tenth Annual Convention”. Bulletin of I. R. E. T. 98 (1933) 10-11, p.6)
という記述からも,当時の生徒のoralの力がうかがえます。
さらに,受験に関しては,グラフ1(『信夫草 受験号』No.32, 33, 34, 35, 36, 37 参照)にあるように,プランを始めた昭和5年以降,口頭教授法(いわゆるOral Method)を部分的に導入したにも関わらず,受験の成績は悪くなることはありませんでした(福島高等商業学校(福島高商),第一高等学校(一高),第二高等学校(二高)はそれぞれ現在の福島大学東京大学東北大学にあたる)。
グラフ1: 昭和4〜9年における福島中学の上級学校進学状況

それどころか,昭和10年には表1,2にあるような素晴らしい進学実績を挙げます(『信夫草 受験号』No.38 参照)。
表1: 福島県における昭和10年度第二高等学校合格者数と割合

表2: 昭和10年度第二高等学校に15名以上合格した学校の合格者数と割合

なぜ,福島プランはこのような成果をあげることができたのか?プランとその成功の要因について調べることで,英語教育実践成功の鍵を考究するのが私の研究の目的です。(院生 小山本)