常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

dig

こんにちは。ゴールデンウィーク中は良い天気が続き,格好のお出かけ日和のようです(g(o)od weather for holiday-pleasure-seekers)。明日に控えたゼミ合宿もこの青空の下で,参加するゼミ生皆が溌剌とした気持ちで臨めたらと思います。
THE DAILY YOMIURI (2010年5月1日付け)のスポーツ欄の端に気になる記事を見つけました。
Eminem takes a dig at Roethlisberger
Eminemアメリカを代表するラップ歌手。彼の曲はしばしば政治や社会に対する皮肉や風刺があからさまに歌詞の中に盛り込まれることで,大変有名です。今回,その標的になったのはNFLトップスター,ベン・ロスリスバーガースティーラーズ)。今年3月,ジョージア州のとあるナイトクラブで彼が女性に暴行を加えたという事件が対象になりました。
beat around the bush してはいけないので,come to the point(cut the chase)します。今回のpointはtake a digです。digといえば動詞で「(地面などを)掘る」という意味が一般的に想起されます(60年代の人にはDig it? (=Get it?),Let's dig it. (=Let's eat.)—by UG)。
しかし,この見出しにはそのような意味は当てはまりそうにありません。しかも名詞です。そこで『ジーニアス英和辞典』(第4版, 大修館書店)を引いてみると,have [make/take ] a dig at で「〜に当てこすりを言う」とあります。また,自動詞digで「(人に)当てこすりを言う(at)」という意味もありました。
ちなみに「当てこすり」とは「他の事にかこつけながら,それとなくわかるように,相手に悪口や皮肉を言うこと」『岩波国語辞典』(第5版,岩波書店)です。しかし新曲の問題部分は:
I’d rather turn this club into a bar room brawl. Get as rowdy as Roethlisberger in a bathroom stall. (THE DAILY YOMIURI 同記事より)
私にはこれが「それとなくわかるように」のレベルだとは思えません!「それとなくわかるように」というよりは,かなり露骨です。試しにdigを英英で調べると,an unkind thing that you say about someone in order to criticize them(Longman Active Study Dictionary)とあり,日本語の「当てこすり」とdigではその意味範疇が微妙に違うように思います。
今回はdigの意外な用法とともに,「英語=日本語」にはならないということを学び,改めて英英辞書の必要性を実感しました。
それにしても,一旦スキャンダルが発覚してしまうと,マスコミのみならず,曲中でもtake a digされてしまうアメリカは本当にこわいですね。次回はCherry Wellが担当します!(ゼミ生 Almost God)