常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

beyond the pale

企業はもはや、利益を追求することだけではなく、地球環境に配慮しなければならないことがよくわかる記事です。グリーンピースなどの民間の環境保護団体の活動が、企業活動や世論形成にとても大きな力を持つようになったことについて述べられています。

The world’s most hated company: can NGOs help turn Shell’s reputation around?

The oil giant has topped the list of most criticized brands for the fourth year running. But should NGOs be doing more to push the carbon fuel debate forward?
(中略)
“The reason why oil companies aren’t praised is that they are beyond the pale,” said Robert Blood, founder and managing director at Sigwatch. “The NGOs’ view is that as long as oil and gas companies fail to acknowledge in their business models that carbon fuels are on the way out, and the only question is how long it will take – there is little point even talking to them, let alone praising them.”

http://www.theguardian.com/sustainable-business/2016/feb/06/most-hated-company-shell-oil-carbon-fuels-ngo-greenpeace-sigwatch-nestle-mcdonalds

本日は記事より、"beyond the pale"を拾います。"pale"は、具合が悪い時などに使う「(顔色などが)青白い」などの意味でおなじみですが、この語は、「柵、杭」の意味もあります。したがって、この表現「柵を越えて」などの意味になりますが、どのような意味合いを持つのでしょうか? 成り立ちを含め、調べてみました。この表現は「(言動が) 許しがたい、度を越した」の意味であり、同義語には"unacceptable"と意味があることがわかります(『Wisdom英和辞典 第三版)。 Oxford Dictionaries On-lineでは"outside the bounds of acceptable behavour"と定義されていました。

また、この表現の成り立ちを調べてみると、興味深くも、イングランドの歴史と密接な関係がありました。14世紀頃、イングランドアイルランドを征服しており、自国領地とその境界を示すべく、フェンスとして杭を打ち込み、その内側を領土としていました(the English Pale)。その柵の内側はイングランドの領地であるため、イングランドの法の支配下にあり、その範囲内で国民と認められますが、その外側、つまり、"beyond the pale"であると、法の外であり、文明化されていない、野蛮な場とみられていました。そこから、17世紀半ば頃に現在使われている意味として用いられるようになりました。以下、参考までに例文です。

the language my father used was beyond the pale. (Oxford Dictionaries On-line)

Her recent conduct is beyond the pale.
(Cambridge Dictionary On-line)

イギリスに留学時、街を歩いていると環境保護団体、グリーンピースが啓発活動をしており、何度か声かけられたことを思い出しました。オックスフォードのcity centreに行くと、キリスト教イスラム教などの団体、環境保護団体、人権団体などが毎日のように活動しており、通り行く人と話したりと日常の風景となっていました。日本ではあまりみられませんが、このような活動がとても活発なのだと印象深く感じたことを思い出しました。また、記事を読み、このような草の根の活動が世論を作って行くのだと思いました。

cf.
https://en.m.wiktionary.org/wiki/beyond_the_pale
http://www.phrases.org.uk/meanings/beyond-the-pale.html