常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

my being

今回は私が最近読んでいる小説、Lois Lowry作The Giverから表現を取り上げたいと思います。

去年映画化もされていたようですが、簡単にあらすじを述べたいと思います。

この物語は、犯罪や飢餓がなくユートピアのようである代わりに、細かな規則があり、人々が強い感情を表すこともない社会が舞台です。そのコミュニティーの子どもたちは12歳になるとそれぞれに見合った職業を任命されます。そして主人公のJonasはReceiver of Memoryの役割を担うことになるのです。その役割とはGiverからJonasが生まれるずっと前から受け継がれてきた全世界の「記憶」を受け継ぐものだったのです…。

取り上げたい表現が使われているシーンは、Jonasが訓練を受けるためにReceiverの部屋にいるところです。記憶を受け継ぐことの大変さに気付き始めたJonasが、全ての喜びや悲しみ、苦痛の記憶を持つReceiverに同情します。
Jonas: “But you have to suffer like that all the time.”
Receiver: “And you will. It’s my life. It will be yours.”
…….
Receiver: “My life is here.”
Jonas: “In this room?”
The Receiver shook his head. He put his hands own face, to his chest.
“No. Here, in my being. Where the memories are.”

ここの”in my being”を取り上げます。文脈から意味は分かりますが”my being”という言い方に出会ったのは初めてでした。『ジーニアス英和辞典第4版(大修館書店)』を見てみますと、”being”には「存在、生存;人生」という意味があります。LDOCEには”literary the most important quality or nature of something, especially of a person”と載っており、日本語の「存在」や「人生」より深いものを感じます。
自分の人生が自分自身の中にあるのは当然ですが、ここでは全世界の記憶こそが自分であり、自分の存在意義であるという意味が込められている一言であると思います。

児童文学のジャンルなので読みやすい一方で、考えさせられる内容となっているのでお勧めの一冊です。(bookmark)