常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

pace

The Economistにもやはり、リチャード三世に関する記事がありました。笑ってしまったのは、記事がObituaryの欄にあることです(画像参照)。
                       
さて、この記事にあった英語表現を拾います。

Richard III
前略
Pace Shakespeare, there was no withered arm.
中略
Yet all the CT scans, environmental sampling and DNA analysis in the world cannot reveal whether, when he kissed the small nephews whose guardian he ostensibly was, he really meant it, or whether he was already contemplating an order that would snuff them out.

赤字で示したpaceについてです。こちらは『リーダーズ英和辞典』によると「(意見などの相違を表して)...に失礼ながら(pace tua)」という意味の前置詞です。Oxford English Dictionaryによると語源はラテン語のpace tuaで意味は"by your level"とあります。とくに「意見の相違や矛盾に対する皮肉っぽい謝罪」として使われるようです。また、初出は意外にも19世紀の中頃の1863年で、19世紀にロンドンにて出版されていた文芸雑誌Fraser's Magazineであるそうです(Fraser's Magazine - Wikipedia)。

さて、該当箇所を試訳してみると「シェイクスピアには失礼ではございますが、「腕が弱った」という事実は見当たらなかった」となります。蛇足にはなりますが、最後の幼い甥たちの箇所は、少し考えさせられます。(Othello)