常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

教育実習報告 #10

教育実習を終えて
1.実習校の生徒たちの特長

6月3日から21日までの3週間、神奈川県の高等学校において教育実習を行う機会をいただきました。遅ればせながらその報告をさせていただきます。

まず私の担当する生徒たち5クラス200名の英語への認識を知るため、彼、彼女らに対し「英語が好きかどうか、そしてその理由」、「何のために英語を勉強しているのか?」というアンケートを書いてもらいました。そこから共通して得られた特徴は「好きでも嫌いでもない」という意見が多く、「受験で必要になるから」と、「わからない」、「勉強する以外に道がない」等、Communicationについて消極的な意見が目立ちました。その中でも、「今度来日するホームステイの留学生と仲良くなりたい」、「海外に友人がいるから」という意見も2〜3件みられました。
その生徒たちの認識に対し、現場の教員が行っている授業形式は、座学によるReadingとGrammarの問題演習中心の授業でした。Communicationに関しては2週間に1度来るALTの発音や表現の授業で取り扱うという形でした。2年生、3年生になると、Communicationの授業はなくなり、受験を視野に入れたReading、Writing、Listeningの問題演習が授業の多くを占めています。教員の中でもCommunicationの要素を取り入れようと、自然な英語表現、ニュアンスの違いなどを話の中に織り込んで、Communicationへの関心を引くようにしていますが、生徒たちは問題演習に躍起になっており、内職を行う姿を見る時も多々ありました。

進学校と評価されているがゆえに、生徒たちは「試験」、「受験」へのモチベーションは高くなっており、受験科目の一つとして英語という教科を認識しているように感じられました。現場の教員の方々も、限られた時間の中で、英語によるCommunication能力を伸ばしてやると同時に、受験勉強もさせなければならないために試行錯誤しているという現状を知ることができました。

2.授業実習について

私が担当した授業は高校1年生のCommunication1(以下C1)を2クラス、Expression1(以下E1)を3クラスであり、全部で25コマほど担当させていただきました。C1の授業で扱うのはReadingからの内容理解とそれについての考察であり、E1の授業で扱うのは文法書による文法解説と問題演習、同範囲の慣用表現です。
 
ここではこの授業実習で私が成功したことと失敗したことを報告させていただきます。まず、普段の授業実習から研究授業に至るまで、すべて自分の軸を中心として授業を組み立てる事ができたことが一つ目の成功です。
私が見学した実習校の授業の多くは座学中心で、生徒が言葉を(日本語、英語かかわらず)発するのは、質問に答える時か、教科書を音読する際でした。私は教育実習に行く前に、ただ時間を消化するのではなく、実習校に、生徒に何かを残していきたいと考えていました。そこで私は「英語を会話のToolとして生徒に意識させる」ということを軸にすべての授業を組み立てました。

導入は1〜2分程度の世間話を英語で話したり、辞書を使って日本語にはない表現を調べさせたり、生徒に想像させたり、Discussion、Debate、40分ほど使ってAll Englishの授業を行ったりしました。普段の授業方式に慣れている生徒には難しいながらも新鮮だったようで、意欲的に参加してくれました。一番うまくいったクラスでは3週目には英語でPair workの指示を出せば自然と英語を出す努力をして、わからない表現は質問してくれるようになりました。「英語を会話のToolとして」少しでも認識してくれたことが私の成功の一つです。

そして二つ目が、教員の方々にも残せたものがあったということです。上記のとおり私はCommunicationを多く取り入れて授業を行ってきました。そのため、教員の方々から、「今までの授業では普段英語を話さない生徒たちがどれほど話せるのか、どれくらい意欲をもってCommunicationを取ろうとしているか、どのような英語なら生徒は聞きやすく、話しやすいのかなどの判断の基準とすることができた」とお言葉を頂き、これからの授業内でのCommunicationの扱い方について再考するきっかけをもらえたと反省会の中で評価して頂けました。これらの言葉がお世辞だったとしてもとてもうれしいことであり、3週間を意味のある時間にすることができたと感じました。

次に失敗したことについてですが、数ある失敗の中に共通する原因が「英語力のなさ」、「取捨選択のできなさ」の二つです。

英語力のなさは、生徒の前で間違えてしまった部分があり、その修正を次回の授業冒頭で行い、また間違えた部分が出てくる…という負のサイクルができてしまうという事態を引き起こす原因となりました。ここから発音、語彙、文法、表現、様々な部分で自身の英語力のなさに悩まされました。また、英語力のなさは、生徒からの突破知的な質問に対し、反射的に答えることができないということも引き起こしていました。この問題は、私がいまだ未熟であることを痛感させる大きな原因となっています。

次の反省点は「取捨選択のできなさ」です。教材研究を深めるたび、Activityの資料を集め、掘り下げるたび、生徒に伝えたい内容、教えたい内容、表現などはいくらでも出てきます。しかし初めは、そのすべてを生徒に伝えようとして、授業時間が足りなくなってしまう危険がありました。本当に必要な知識や活動が、多くの情報に紛れてしまい、生徒に伝わらないという事態を引き起こしてしまいました。反省会の際に、教材研究の結果のうち、時間内に生徒に伝えられるのはそのうちの2%にも満たない、だからこそ生徒に本当に必要な部分を取捨選択し、時間をかけていかなければならないと教えられました。限られた時間を効率的に扱う能力がまだ足りていないことを実感させられた原因です。

3.教育実習を終えて、後輩へのアドバイス
 実習中、自分のふがいなさに悩まされることが多く、今までの自分を振り返って後悔する場面も多かったです。しかし、未熟な自分でも、担当HRでない生徒からメッセージをもらい、部活動で相談を受け、進路講演会でアドバイスをし、実習後に学校を訪れた際も、まだ自分の写真と生徒に残した言葉を残してもらっています。多くの生徒と教員の方々の記憶に残る実習を行うことができたと感じさせてもらいました。反省すべき点は多いですが、私の理想とする教師像が鮮明になり、これから先の時間をどう過ごすべきかを再認識できました。教頭先生がおっしゃった事で「教員であるなら、自分の夢を全力で語り、生徒にも全力で夢を語らせられる人であり続けたい」という部分が私の心に残っています。これを含めて教育実習は、私も今ある夢を全力で語って、それを叶えるようにこれからを過ごしていきたいと感じさせられる経験となっています。

 これから実習に向かう後輩にお勧めすることは「何を残すかを考える事」です。自分の経験として何を残すか、生徒の記憶に何を残すか、そして母校の為に何を残すかを考え、それを軸にして生活していくと、きっと有意義な教育実習期間を過ごせると思います。教員としては全くの未熟者である私たちが教壇に立ち、生徒の未来にかかわる機会をもらえることは、この教育実習期間をおいて他にないと思います。教員になる人もそうでない人も、人の前に立ち、多くの人を引っ張っていくという経験はとても有意義だろうと思います。自信をもって教育実習の経験を話せるよう、今のうちから準備をしていきましょう。(A・T)