常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

「なんでだろう座談会(テーマ:音読指導)」の感想

本日(02/20/11),日本大学経済学部7号館で行われた,関東甲信越英語教育学会主催の「音読指導」をテーマに座談会に参加してきました。参加人数は20人前後で,大学生から公立・私立の中高の先生,さらに大学の先生もいらっしゃいました。今回は,座談会の簡単な内内容と,私の感想を書かせていただきます。
座談会は10~12時の2時間で,以下のような流れで進められました。
1)中学校の音読実践の報告
2)高校の音読実践の報告
3)1)〜2)についての意見交換
4)理論的側面からみる音読
まず,井戸聖宏先生が中学校での実践報告をしてくださいました。井戸先生の指導方法は「方法を変えて何回も音読すること」です。音読をする理由の一つとして,教科書の本文を頭の中に入れることが挙げられますが,何回も同じ方法では生徒も飽きてしまいます。そこで井戸先生は以下のような方法を実践されていました。
1)素材を2回聞かせる
2)教員の後について読む練習
3)個人練習
*この間に本文の一部を板書
4)生徒が一人ずつ板書を頼りに本文再生,一文が読まれたらコーラスリーディング
5)個人練習
以下省略
1)〜5)の過程を約20分で駆け巡るのです。会場では実際生徒が音読に取り組んでいる音声を聞かせていただきました。その音声から生徒たちは楽しそうに,そして真剣に授業に取り組んでいる様子がうかがえました。
次に発表してくださったのが,臼倉美里先生です。臼倉先生は「音読ア・ラ・カルト」と称してとても多くの音読活動を紹介してくださいました。まず教科書の英文を意味がわかった状態で頭にまるごと取り込むための音読として,
1)対訳音読(日本語を読んだら対応する英文を読む)
2)シャッフル音読(英文の順番がでたらめになっているハンドアウトを使用。本文の流れを理解させる)
3)突っ込み音読(文と文の間に一言質問を添える。内容理解の促進を目指す)
が挙げられていました。さらに一工夫された音読として,
4)ペン置き音読(教科書にペンを置くことで一部目隠しの状態にし,どのくらい覚えているかを確かめる)
5)穴あき音読(重要語句の箇所を空けたハンドアウトを渡し,それで音読)
6)並び替え音読(英文の一部が並びかえられているハンドアウトを作成。それで音読)
7)シチュエーション音読(場面設定をして音読。例:アナウンサーのように音読など)
そして,以上の2つの発表について意見交換をした後に,簡単な音読の理論を学びました。
私が全体を通して感じたことは大きく分けて2つあります。一つは多種多様な音読方法はあるが,時間割の都合上細かい音読指導または発音指導が出来ないということです。意見交換の際に,個々の発音指導についてという話になりまし。多くの先生は「音読させるだけでも時間的に大変なのに,個々の発音指導までするのは厳しい」とおっしゃっていました。国際寮に住んでいて日本人の発音はあまり上手ではないと留学生から言われた経験がある私にとっては,とても厳しい現状を突き付けられた気持ちでした。そしてもう一つが,音読は非常に注目されているが,効果が目に見えて表れにくいということです。理論的にも音読をした方が良いと言われていますが,実際の英語力に結びつくまでにどのくらいの時間がかかるかはまだはっきりとは分かっていないので,音読中心の授業を組むのは難しいというのです。
私はまだ教壇に立ったことがないので,理想と現実の英語教育のギャップを肌で感じることはできません。しかし「自分の意志を伝える英語」を習得するために,どのようにすれば良いのか,そのために音読をどのように活用していくのかを考えるのが大切だと感じました。(ゼミ生 persimmon柿生)