常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

日本英語音声学会感想(camel編)

先週早稲田大学高田馬場キャンパスで開講された日本英語音声学会とクイーンズランド大学英語学科主催の第1回英語音声教育講座に参加してきました。その一端は小山本先輩がすでにお書きになられているので,(大変遅くなってしまいましたが)自分は全体的な総括を試みたいと思います。

講座は3日間行われまして,講師は音声学・英語学の権威John Ingram先生です。講義内容を大まかに要約しますと,初日は主に「母音(vowels)と子音(consonants)の調音(articulation)」,2日目は初日の話題をさらに発展させた「超分節的特徴(suprasegmental features)と音律(prosody)」,最終日は「訛り(accent)と変種(variation)」について話されていました。これらをさらに一日ごとに区切ってまとめていきます。

初日にIngram先生は人が言葉を発する際に重要となる3つの構成要素について説明されていました。その3つが“articulators and resonating cavities”, “larynx and voicing mechanism”, “lungs and airstream”です。この3つの要素がどのように私たちの発話(utterance)と関わっているのかを説明されていました。そして子音,母音の順番で個々の音声がどのようにして作られるのかといった専門的な部分に入っていきました。初日は個々の音,つまり分節素(segmental)に焦点が絞られていました。

初日は分節素を中心に取り上げられていましたが,2日目は個々の音を飛び越えた領域である超分節的特徴(suprasegmental features)に力点が置かれていました。超分節を構成する要素として,リズム(rhythm)やストレス(stress),イントネーション(intonation)といったものがあります。Ingram先生は上記の言語の特徴をdevoicing(無声音化)やintonation contour(音調曲線)といった専門用語をもちいながらも,それらが一体どのようなものなのか具体例を提示しながらわかりやすく説明されていました。

最終日は英語圏の訛りと第2カ国語として英語を話している話者の訛りについて話されていました。Ingram先生はまず「訛り」にはregional dialectとsocial dialect, stylistic dialectの3種類があると指摘されていました。Regional dialectの種類は多様でAmerican English, General American(GA), BBC English, Estuary English, Cockney, Received Pronunciation(RP), Australian English, などがあります。Social dialectに関しては小山本先輩が記事に書かれています(http://d.hatena.ne.jp/A30/20100820/1282302980)。Ingram先生のお話によると,今はそれほど厳しくないということですが,昔オーストラリアの教師は子供達に英語を教える時,自分の話し方にも気を遣っていたそうです。日本でも昔,職を得るために上京した若者が田舎育ちというのを隠すために必至に方言を消そうとしたという話を聞いたことがあります。

この講座を受講して改めて自分の音声学に関する知識のなさを思い知らされました。生徒はまず教師の英語の発音をモデルとしますので,教師の英語はとても重要だと言えます。教師の発音が変わらなければその授業を受けている生徒の発音も変わっていかないので,今後もっと音声学の知識を増やしながら自分の英語の発音に磨きをかけていきたいと思います。そして教壇に立った際,生徒によりauthenticな英語を提供できるよう精進していきます。(ゼミ生 camel)