常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

英語文化遺産 #3 伊地知純正 その2

日本の英文家,伊地知純正の続編です。
http://d.hatena.ne.jp/A30/20100601/1275382777
書斎にある数冊の伊地知の著作はその1で述べた高校教員時代に漁ったものです。古書店で入手できるとそれこそむさぶるように読みました。
ここではその内,今でも入手しやすい(もちろん古本屋で)ものを1冊,紹介しておきます。
          
その1では英文日記を紹介しましたが,本書は自叙伝で,右半分が日本語,左半分が英文というbilingual構成になっています。
          
内容はお読みくださいですが,宮崎の田舎にいた青年がいかに英語に対しての志をいだくようになったのか,どのような英文に触れ,英文を書きてきたのかがchronologicalに描いてあり,私達が英語学習を進めて行く上でぶつかる疑問に対して,ひとつの方法を披瀝してくれています。
          
ついでですが,UGがいたく感激した記者時代の見聞録をまとめた英文書もあげておきます。
          
          
          
いずれにしても,ちゃらちゃらした「英会話」はいざ知らず,達意の英文を書くようになるためには,生半可英語学習,そして志を持たないとどうしようないことがよくわかるはずです。彼の残したものは大きな,大きな英語遺産です。最後にネットをサーフしていたら出会った文を転載しておきます。(UG)
医学系の専門書店 星和書店さんからの転載「こころのマガジン vol 83」
http://www.seiwa-pb.co.jp/htmlmail/83.html
2010年、明けましておめでとうございます。 新年になると、おめでとう、と言いますが、みなさん、おめでたい気分になりましたでしょうか。英語では、I wish you a happy new yearですから、おめでたいというより、幸せな年を願うということでしょうか。
昨年は、随分と雑誌の廃刊がありました。私にとって大変ショックだったのは、研究社の「英語青年」が休刊になったことでした。と言って、最近まで英語青年を読んでいたわけではありません。ですので、最近の英語青年の目次や内容がどのようなものであるかは、知りません。私が高校の時、そう40年以上前でしょうか、毎月、英語青年が出版されるのを楽しみにしていました。それ以上に熱中していたのは、神田村の古書店にいって、昔の英語青年のバックナンバーを探索することでした。
英語青年には、和文英訳の課題が出ている頁があって、その和文を英訳して編集部に送るんです。ペンネームを書いて送るのですが、次の号(いや、次の次の号)くらいに、ランク別にペンネームが並んで載せられるのです。なかなか上のランクに上がらないんです。その和文英訳で何しろ俊逸だった講師は、早稲田の商学部の教授の伊地知純正先生でした。私が高校のときには、もうこの欄を担当されていなかったので、その時より10年ほど前の英語青年を古書店で探しまわり、伊地知先生が担当されている号を見つけると、それを宝物のように買ってきたものです。何しろ英語がうまい。それにコメントが超面白いのです。マンガを読むより面白かったのです。私は、伊地知先生の採点を受けたことはないのですが、伊地知先生の影響を強く受けたと思っています。伊地知先生は、その当時の日本人が(戦後日本が貧しいころ)英会話を習うことが英語を勉強するということだと思っていたことを苦々しく思っていたのでしょう。It is more important to write a good English than to speak English というようなことをよく書かれていました。そこで、英語青年だけでなく、伊地知先生の英語で書かれた著書を古書店で探し回りました。When two cultures meet, First visit to Londonなどが私の戦勝品でした。
この雑誌が休刊になったのですから、かなりショックを受けたわけです。英語青年のファンと言っても、和文英訳の欄だけを求めて買っていたのです。ワーズワースキーツだシェクスピアだという論文には、目もくれないんですね。と考えると、雑誌では、全部の内容を気に入って買うというよりは、一つでいいんです、ほしいと思う内容があれば。たった一つ読みたい、勉強したいと思うものがあれば雑誌を購入するのではないでしょうか。今の雑誌は、このたった一つが無いような気がします。
星和書店は、医学の各分野を平均的に出版するのではなく、本当に狭い領域に絞って出版活動を行っています。この一つの領域において、本年も引き続き輝いていられるように努力していきたいと思います。