常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

tender green

今年は日本だけでなくアメリカでも暖冬となっており、過ごしやすい一方で、自然界には様々な影響を及ぼしています。NYでは早くも春の植物が息を吹き返しました。

Ah, the pleasures of the New York Botanical Garden in winter. The crowds thronging to the Holiday Train Show. The deep greens of the hardy conifers.

And, this year, the sweet aroma of flowering viburnum.

Across the region, this uncharacteristically warm winter has flower beds springing to life.

Daffodil bulbs in suburban gardens are sending up tender green periscopes. And in city parks, roses are showing their plumage against Christmas tree backdrops.

http://www.nytimes.com/2015/12/25/science/touch-of-spring-in-december-on-east-coast-as-flowers-bloom-early.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&clickSource=story-heading&module=second-column-region®ion=top-news&WT.nav=top-news&_r=0

取り上げる表現は“tender green”です。“tender”には「優しい」という意味の他に「<音・色・光などが>柔らかい、弱い」という意味もあります。色で言うと薄めの色になるでしょうが、“tender green”「柔らかな緑色」と書いて「新緑」(『ジーニアス英和辞典第4版(大修館書店)』)を意味します。“fresh green”などと表現することもできますが、“tender”の方が柔らかな新芽の感触まで伝わってくるような気がします。

記事で直後にある“periscope”「潜望鏡」はなぜ突然このような単語が出てくるのか一瞬分からなかったのですが、潜望鏡の画像を見てみると一目瞭然でした。ここでは主語にある“daffodil”「ラッパスイセン」の花が垂れている様子と潜望鏡の形が似ていることから、このように表現されていると思われます。

そして、その次の一文でもただ単に芽が出たと言うのではなく、“plumage”「(鳥の)羽、羽毛」がバラの新芽を表しています。最初に読んだとき“plumage”がバラの一体何を指すのか悩んだのですが、こちらも新芽の形と羽の形が似ているので、新芽の生えてきた様子がまるで「羽」でも生えてきたかのように表現されていることが分かります。

このような文章の工夫が、季節外れの春の訪れを一層強く感じさせてくれている気がします。(bookmark)