常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

subject to regulatory approvals

UG先生ご指名ありがとうございます。また,しばらくご無沙汰しておりすみません。

M&Aのニュースは当事者の日経新聞でも一面を飾っておりましたね。
 M&Aにも色々と種類があり,被合併会社の法人格が消滅する吸収合併もあれば,今回のケースのようにFTの全株式を購入し,完全支配を通じて会社の傘下に組み入れるものもあります。ここでは,株式交換によってM&Aを実施しております。株式交換によってFT株を100%所持するピアソンから,全株式を取得し,対価として現金を支払っております。この手続によって,FTは法人格を有したまま日経の子会社になります。日経は,会社の基本的な方針を決定する株主総会においてFTの議決権全てを所持しているため,実質的にFTを支配したことになります。
 ご質問頂いた"subject to regulatory approvals"は「当局の承認をえる」と訳せると考えました。それでは,ここでいう当局とは誰を指すのでしょうか。まず,合併をするには株主総会の承認が必要であることが会社法によって定められております(http://www.dir.co.jp/souken/research/report/law-research/commercial/12112101commercial.pdf)。合併は,合併法人・被合併法人の利害関係者に多大な影響をあたえるため株主総会で承認される必要があるのです。次に,規制当局からの承認が必要な場合があります。たとえば,ソフトバンクが,電話会社のスプリント社を買収した際に以下の文書が報告されました。

of both the Company and Sprint, is subject to approval at a meeting of the Sprint shareholders, customary antitrust, Federal Communications Commission and other regulatory approvals and the satisfaction or waiver of

subject to customary regulatory approvals - 日本語翻訳 – Linguee辞書

 "Federal Communications Commission"は,連邦通信委員会であり,米国の放送通信事業の規制を行います。"antitrust"は,独占禁止法に関するものです。同業他社が合併した場合,市場を多く握ることで寡占化する場合があります。コンビニ業界3のファミリーマートと4位のサンクスで合併の話が持ち上がった際,問題となったのは独占禁止法に抵触せずに,認可が得られるか否かでした(http://biz-journal.jp/2015/05/post_9870.html)。
 このよに合併というものはお金を払えばそれで終わりというわけではなく,様々な機関からの認可が必要となります。そのため"subject to regulatory approvals"は,"approvals"と複数形になっているのだと思います。(Ume)