常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

get the boot

個人的に好きな「トムとジェリー」のタイトルから1つ表現を取り上げます。邦訳では「上には上がある」という風に訳されている作品です。

               

作品の中ではこれが第1作で、当時は「トムとジェリー」という名前ではなく、トムはジャスパー、ジェリーはジンクスという名前で呼ばれていたそうです。皆さんがよくご存じの名前が使用されるのは第2作目からとなります。因みに日本語吹き替え版では、第2作に合わせる形ですので、前作を通してトムはトム、ジェリーはジェリーとなります。

私が気になった表現は、get the bootです。私はこの話を知っていたので、すぐに何となく「出ていく」という意味は頭に浮かびましたが、それが確実なものかが分かりませんでした。「ブーツを履く」が直訳ですが、そこから転じて「出ていく」というニュアンスになったのではないかと、勝手な予想をしていました。

『スーパーアンカー英和辞典』第4版(学研教育出版)を見てみますと、長靴で蹴られるというところから、「クビになる、解雇される」という意味になります。予想は外れてはいなかったようです。さらに同辞典で調べたところによると、bootに動詞の意味があり、boot outという形を取り、「追い出す」という意味になるとのことです。ですが、英語史の観点から言うと、先に登場したのは名詞の「ブーツ」という意味です(『英語語源辞典』、研究社)。LDOCE5には、the bootとして意味が載っており、くだけた表現で、“when someone is forced to leave their job”と定義されていました。猫は仕事をしているというわけではありませんが、追い出されるのは、この家のペットであるトムの方ですので、「飼い猫としての自分の地位を追われる」としても悪くはないかもしれません。(Kawada)