常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ゼミで学んだこと #5

 私が田邉ゼミに入った理由はいくつかありました。教師としてあるべき姿を学びたかったことももちろんですが、もう一つ大きな理由があったのです。それは、人前に出るときの心構えを身体の芯から今のうちに作りたかったからです。この学校にはイギリス文学コース、アメリカ文学コース、英語学コースの三つのコースがゼミ選択の際に提示されます。シラバスを見ると、英語学コース以外のゼミは文学作品を読んであらゆる観点から批評する分析型のディスカッションが主な活動でした。英語学コースの多くのゼミの主な活動としては、人は何故母国語を話すことができるのか、何故第二外国語は習得に多くの困難が生じるのかというUGに関することを学ぶものでした。机に座り、ただ自分の考えたことを伝えることはできると思っています。ただ、私は自分が教室の中心に立って自分がその空間を率先して良いものにしていく力が何もない、いつも誰かのあとについていくだけでした。これまでプレゼンテーションなどが課された授業は大学の中で皆無でした。周りはかなりの場数をこなし、スキルアップをしていき、いつも周りの友人の堂々とした姿を見て自分と比較し落ち込んでしまうことがしばしばありました。このままではいけないと思っていても自分でどうしていいかわからない、はじめの一歩が踏み出せない自分に焦りを感じていました。そんな私を変えてくれるのではないかと思ったのが田邉ゼミでした。自分が教室の中心に立ち、自分が発信したことがその空間の鍵になる、そんな立場になったときに田邉ゼミで学ぶことができる教師としてのあるべき姿は、自分がならなければならない姿だと思ったのです。人前に立つことが嫌いというわけではありません。私は精神的に弱く、甘いところがあるため、ただ怖い、自分の姿が周りに眼にどう映っているのか、もし変に映っていたらと考えると足がすくみ、声が震えます。でも、ここでまた逃げてしまったら私はまた変われない、自分のなりたい姿に近づけない、そう思って田邉ゼミに入ることを決めました。私に足りないことを補うにはその足りないところを補ってくれる環境にまず飛びこむことが必要なのだと思いました。
 周りが教師になる以外はありえない、という夢の持ち主が集まっていることは承知していました。実際、私も今のままでは到底なれないと思っていても、塾講師のアルバイトをしていく中で子供たちの成長を見ていくことに喜びを感じたことから、教師という仕事に魅力を感じています。教師という夢を追う以前のレベルにいるように感じていました。生徒一人ひとりの心に寄り添うことはできても教室の中心に立つことは今の私には難しいと思いました。まずは、自分の意識改革をしよう、教壇に立つだけで震えてしまうようでは教育実習のときにどうする、そんな気持ちでした。
 実際、田邉先生にお会いしてまず私が感じたことは私の精神面以前に私の英語の学力が何もないに等しいということでした。これまで塾講師を通して生徒に英語を教えていた自分が原点の原点に立たせてもらった瞬間でした。単語力が足りなすぎる、この言葉を聞いた後、どこに行くにしても単語帳を持っている自分がいました。周りの友達から最初は珍しがられていましたが、そんな姿もすぐに自然になっていました。ある友達からは遊びに行く時くらい置いていきなよと笑われました。しかし、自然に鞄の中にいれ、電車に乗ったら開いていることが定着し、ゼミの中で単語テストをやると徐々に点数が上がり、自信が少しだけ出てきました。ブログの単語も必ず単語カードを書いて、めくって、繰り返して、母からもこれだけは几帳面だよねと言われるほどでした。今、田邉ゼミでの授業を終えて溜まった単語カードを見ると、入る前の自分と比べて確実に意識が変わった自分がいます。
 私の心に最も印象的に残っていることはゼミ合宿でした。今だから言える話ですが、合宿に行く前に泣いていました。怖すぎて楽しみと思えることがスケジュールを見て何もない、ハードなものしか連想できず、電話で母に泣きついていました。今思えば、何していたんだ自分と笑ってしまう自分がいます。初めての模擬授業で、模擬授業を課されたのが出発4日前ということもあり、寝ないで準備をしたことを思い出すと、教師という仕事は生徒の目からしてみたらさほど大変そうには見えなくて、何気なく先生の姿を見ていましたが、いざ自分がそれをやってみることになると、今までお世話になってきた先生方が魔術師のように見えました。教室の中心に立って堂々としている姿の裏側は、きっと寝ないで指導案を練っている努力の姿なのだと思いました。ただ怖い、自分の姿が周りに眼にどう映っているのか、もし変に映っていたらと考えると足がすくみ、声が震えている自分が情けなくなりました。それから私は秋学期に入って模擬授業をやらせていただく事になって前よりは確実に楽しくできている自分に気がつきました。先生がフィードバックの際に「ぴょんぴょんしている姿が楽しそうでかわいい」「もう一回やって」「教育実習に行ったら確実にファンがつくぞ」という言葉を頂いた時はまだまだだけど、楽しい気持ちで授業をしていることが生徒に伝わるようになったと少し前進できたように感じました。
 今、一年を振り返ってみるとゼミで密かに泣いていた自分と少し成長できたような気がした自分の2人の自分が浮かびます。でも確実に後者の方が大きく映っています。他の授業で模擬授業をやったときに、その先生から次の時間に模擬授業をやる子たちは緊張してしまうような授業だったねと褒めていただき、他の生徒たちからは緊張を感じさせない、堂々としていてよかったと言われました。確実に田邉ゼミに入ったからだと思います。入る前の自分は今振り返ると情けない姿しか思い浮かびません。そもそもこのゼミに決めた大きな理由、「自分の姿が周りに眼にどう映っているのか、もし変に映っていたらと考えると足がすくみ、声が震えてしまう自分を変えること」、この点については良くなってきたと思います。しかし、英語の学力の面ではまだまだ到底自分の満足できる水準には到達していません。以上の点から、私は今の自分に50点をつけたいと思います。これから残りの50点、それ以上の点数を今の自分に上乗せできるような自分に変われるよう、田邉ゼミで学んだことを胸に日々精進していきたいと思います。
田邉先生、本当にありがとうございました。恥ずかしくて直接最後の時間に伝えることはできなかったけれど、先生に会えた事を誇りに思っています。また、お会いできた時は笑ってお話していただけると本当に嬉しいです。本当にありがとうございました。(High Well)