常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

control

本日は”control”についてみていきたいと思います。いつものように『Wisdom英和辞典(第三版)』(三省堂)を見てみると「支配,指揮,管理,統制,制御,規制」と出てきました。
 管理会計では”control”を「統制」と訳します。専門的なお話になりますが,会計処理のルール本(『会計法規集』)の中に原価計算に関する記載があります(原価計算基準)。原価を計算する重要な目的の1つは原価を管理していくためです。つまり,組織が想定している通りの金額を維持するということです。このほかにも所与の経営環境の中で原価を引き下げるような改善活動を行ったり,経営環境を抜本的に変更することにより原価の引き下げを行うことが管理になります。
 以前のお話の中で”management”という単語を取り上げました。”management”は計画と統制からなります。原価計算基準が作られたのは今から50年以上も前のことです。当時に要求されていたことは製品の金額を一定に保ちつつ大量生産を行うことが重視されていました。しかし今日では製品金額を維持していくだけではなく品質を一定に保ちながらも原価を削減していくことが要求されるようになりました。組織間の競争が激化しているからです。
 原価計算基準では原価を一定の金額に維持して生産していくことを「原価管理」と呼びました。アメリカで”cost control”と呼ばれたものを「原価管理」と翻訳したのです。しかしその後,原価を一定金額に保って生産するのではなく原価を低減していく活動である”cost management”が生み出されました。その結果cost managementの翻訳が問題になりました。理想的には「原価管理」と訳をつけたいのですが,すでに”cost control”を「原価管理」と訳してしまっているので使えなくなってしまったのです。
 現在は,「原価管理」を狭義と広義の意味でとらえております。狭義は”cost control”の意味を指します。広義には”cost management”として使います。(Ume)