常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

a hard row to hoe (a hard roe to hoe)

様々な文献を読んでいると、同性愛というものが受け入れられつつあるように感じる一方で、宗教上の問題など議題は山積みになっているように感じます。さて、The Economistでは、同性結婚についてと中絶問題を絡ませた記事がありました。何と言っても、見出しが衝撃的です。

Gay marriage and abortion: A hard Roe to hoe
http://www.economist.com/blogs/democracyinamerica/2013/03/gay-marriage-and-abortion
見出しのA hard Roe to hoeは、3つの意味合いが隠されています。

まず、a hard row to hoeで「むずかしい[うんざりさせる]仕事」という言葉(特筆しない限り引用は『リーダーズ英和辞典』)。ここで使用されるrowは「列」を意味し、畑の畝を指します。次いでhoeは「長柄の鍬(クワ)」を意味します。

2つ目は、記事にも参照されているRoe v. Wadeの裁判です(Roe v. Wade - Wikipedia)。これは、アメリカの現代社会学を学んだ人ならお馴染みですが、「中絶は女性のプライバシーであるか否か」ということについて争った裁判を指します。

もう一つかかっているのが、a hard roeという言葉です。Oxford English Dictionaryで意味を確認してみますとhard roeで“the spawn of a female fish”とあり「はららご」を指すことがわかります。このroeについては、Romeo and Julietを扱った時に登場しました(記事はこちら→roe - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から)。前の記事を参考にすると、記事では、roeが人間の睾丸や卵巣を指していることがわかります。

すなわち、ここでは同性結婚というものが、子孫繁栄の観点から考えるとa hard row to hoeつまり「難しい仕事」ということと、Roe v. Wadeや前の大統領選でも話題になったようなpro-lifeとpro-choiceの二項対立と裁判の拘束力を見出すことができます。(Othello)

c.f. legitimate rape - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から
measure - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から
Don't Ask Don't Tell - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から
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