常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

let him learn to box his corner

少しずつJames Joyseの短編小説集Dublinersを読み始めました(「奥原先生最終講義 # 4 - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から」)。まずは最初に収録されている“The Sisters”です。面白い表現に出会ったので、紹介したいと思います。詳しい文脈は割愛しますが、フリン神父が亡くなったことに対して大人たちが会話しています。その会話からです。

— What I mean is, said old Cotter, it's bad for children. My idea is: let a young lad run about and play with young lads of his own age and not be... Am I right, Jack?
― That’s my principle, too, said my uncle. Let him learn to box his corner. That's what I'm always saying to that Rosicrucian there: take exercise.

さて、赤字の英語はどんな意味でしょうか。調べてみると、アイルランドスラングのようです。編者のJeri Johnsonの注によるとbox his cornerについて“to defend him”とありました(Johnson, p.197)。

一方、ジョイスの作品の注釈本(Annotated)の編者のGiffordによると、cornerはスラングで“share”や“proceed”を表すという注があり、“let him go out and make a living and get ahead in the world”という意味であると解説しています(Gifford, p. 30)。

両者を考慮すると、「独り立ちさせてやれ」「自分の身ぐらい自分で守るってもんだ」くらいの意味になるように思います。(Othello)

最後に引用箇所の試訳をしてみます。

― なんていうか、コッター爺さんは言った、子供たちに悪影響だろ。ワシの考えでは、元気な子供は、自分と同じくらいの歳の子供と走ったりして遊んだりするもんだ、でもな、、、そうだろジャック?
― そいつは俺の主義でもある、叔父が言った、自分の身ぐらい自分で守るもんだ、薔薇十字団員の子らにはいつも言っとる、鍛えろってな。