常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ご指名質問:summer

ご指名質問を頂きました。お題はsummerの意味についてです。

The trick is to make summer last as long as possible, to put off reality for another day.

さて、summerは普通「夏」という意味ですが、しばしば「最盛期」「最高の瞬間」という意味を持ちます。これは、ヨーロッパにおいて夏は小麦を収穫する時期に重なることから「人生の最盛期」という意味を帯びるようになりました。「最高の時期」ということは、同時に終わりの時期を示唆します。

おそらく「人生を謳歌する」「人生の最盛期」という意味合いのsummerで、我々がピンッと来るのはシェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』(A Midsummer’s Night Dream)でしょう。midsummer’s nightとは、「夏至祭の夜」——キリスト教の聖ヨハネ祭が行われる6月24日。その前夜はMidsummer Eveと呼ばれ、妖精たちが踊り、人々が火を囲み、恋をする夜であるとされています。ここから劇中にオーベロンやパックなどの妖精が登場することも頷けます。さらに、登場人物の恋愛の行方や縺れを描いた恋愛の「最盛期」を描いていることも興味深いでしょう。

またsummerという言葉が登場するシェイクスピアの作品と言えばSonnet 18です。意中の貴方と夏を比べようか、と投げかけるこの作品は、「貴方がもっとも美しい時」を「収穫の時期;夏」「最高の時期」に掛け、愛を訴えているのです。上で「最高の時期」は同時に終わりを示唆すると書きましたが、これもその一例で、儚い美しさと儚い夏の時期を掛けています。

以上を踏まえると、スポーツ選手における最盛期という意味で、summerが使われているのは、非常に興味深く思えます。それは、スポーツ選手のキャリア・ハイやピークという意味と、その時期にはいつか終わりが来るということを示唆しているように読めるからです。実際に記事を読んでみると年齢というものと、今シーズンで復活を果たしたジーター選手(he experienced a renaissance this season)について書かれています。さらに、ヤンキースが彼抜きで立ち向かうのかが書かれています。(Othello)

Cf. Summer-of-Love vibeとdolled up - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から