常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ご指名質問回答:working since 50 years

中学生の時に、「since、agoは一緒に使ってはいけない」「sinceは完了形で使う」と習いました。しかし、今回頂いたご指名質問の例文では、次のように使われています。

Gurdon is working in the field since 50 years ago, while Yamanaka has conducted a groundbreaking experiment in 2006, that transformed the field of regenerative medicine.

文献を見てみるとsince…agoは、日本では1960年代から議論されているようです(柏野、2010)。わたしだったら、it has been 50 years since Gurdon worked in the field.やGurdon has been working in the field for 50 years.という具合にIt…sinceの構文やforを使って表現すると思います。文献を見てみましょう。

学習英文法書『ロイヤル英文法』でsince…agoについて調べてみると、やはり「since〜days《years》 agoのようにsinceとagoを一緒に使うのは避ける」とありました。また、『現代英語語法辞典』を参照してみると、「sinceとagoはともに用いられない、これはagoが現在を基準にした過去の動作や状況について述べる時に用いられるためである」とありました。

一方、since…agoの用法について、Swan(1995)は、since…agoというかたちを取る時には、次の例文にあるように、現在完了形を使うとしています。

We haven’t bought any since a week ago.
I have been living here since eight years ago.

事程左様にsince…agoというかたちは、現在完了形のかたちでなら一応容認できることがわかります。ちなみに、現在(進行)形とsinceについては、Swanによれば、“… present and past tenses are occasionally found, especially in sentences about changes”とあり、現在形や過去形でもsinceが使えることが改めてわかりました。これは学部一年生の時に学んだことで、今でも驚きは覚えています。Swanの例文には次のようにあります。

You’re looking much better since your operation.

さらに柏野(2010)は、ネイティヴ・スピーカーが、次のsince…agoの用法を用いた例文を読んだ時の反応をまとめています。

He has not been back to his home village since twenty years ago.

柏野によると、上記の例文は、「理解できるが正しくない」としています。しかし、「文脈上、何らかの出来事(たとえば、村からの人の大流出)がすでに言及されていて、それが上記の例文に含意されている場合には要因可能であるとしています。つまり、sinceの後に何らかの出来事が明示されている場合は、完全に容認することが可能」であるとしています。

今回のご指名質問の文では、Gurdon is working in the field since 50 years agoというかたちですし、現在完了形でもないので、正しい用法ではないように思えます。以上を踏まえると、生徒には、非標準的な用法なので使うことは避けるように促し、It…since構文やforのかたちで表すように指導したいと思います。(Othello)

参考文献
柏野健次. (2010). 『英語語法レファレンス』東京:三省堂.
西友七. (2006). 『現代英語語法辞典』東京:三省堂.
脇貫陽、マーク・ピーターセン. (2006). 『表現のための実践ロイヤル英文法』東京:旺文社.

Swan, M. (1995). Practical English usage 2nd Ed. Oxford, UK: Oxford University Press.