常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

a double life

あのココ・シャネルはナチスのスパイだった!?今年の後半に発売されるSleeping with the Enemy: Coco Chanel's Secret Warで語られていると,英国紙Telegraphが伝えています。
French designer Gabrielle 'Coco' Chanel spied for the Nazis during the German occupation of France in World War II, according to a new book, Sleeping with the Enemy: Coco Chanel's Secret War , by Hal Vaughan.
Vaughan expands on long-standing evidence that the iconic designer had a double life and was the lover of a spy, Baron Hans Gunther von Dincklage.
(中略)
Chanel was also "fiercely" anti-Semitic, the book says, although at the time she would not have stood out among numerous other high-profile compatriots later seen as having collaborated during the 1940-44 occupation.
http://fashion.telegraph.co.uk/article/TMG8703899/Coco-Chanel-spied-for-Nazis-claims-new-book.html
今回注目したいのは,強調箇所のa double lifeです。文脈でなんとなく意味はわかります。確認のため辞書で調べてみると「二重生活;裏表のある生活」とあります(『リーダーズ英和辞典』研究社)。彼女は,デザイナーとスパイの愛人――さらにはアプヴェーア軍諜報部のメンバーを募っており愛人自身がスパイであった――という裏表のある生活をしていたようです。
そして,信じがたいことですが彼女は,激しい反ユダヤ主義(anti- Semitic)であったようです。かなり強い言葉で書かれています。ここでは,fiercely「荒々しい,獰猛な」(同上)とあります。LDOCEではfierceの箇所で,「怒りにまみれて,もしくは強い気持ちで,時に乱暴な」や「怒っていて,もしくは攻撃的で,とても恐ろしく見える」などと説明されています。さらに,ダブル・コーテーション・マーク(“ ”)で囲まれていますから,そのことがかなり強調されていると見て良いでしょう。
また,引用元の本文にたびたび登場する,intelligenceという言葉は,「《特に重要な》情報;諜報;諜報機関」(同上)という意味で使われています。これについては,川成洋先生の『紳士の国のインテリジェンス』(集英社,2007年)にて詳しく述べられています。新書なのでかなり読みやすく,スパイ先進国のイングランドにおけるインテリジェンスについて詳しく書かれていますので,気になる方はご確認ください。
最後に,ココ・シャネルが本当にスパイの愛人で,反ユダヤ主義だったかはわかりません。これについては,慎重に資料を吟味して,われわれ読者が解釈し批評しなければなりません。この世の情報のすべてが真実ではありませんから,常に疑う姿勢というものが重要だと記事を読んでいて,思いました。(Othello)