常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Mad Dogs and Englishmen

電子版The Independentのトップ・ニュースから英語表現を拾います。記事によるとあのイングランドの一部で,31度の真夏日になったようです。天気予報士は,雷を伴う暴風雨が一時的な残暑をもたらす可能性を示唆しています。
Thunderstorms threaten abrupt end to heatwave
Parts of Britain are set for another scorcher today, but forecasters warned thunderstorms could bring the short-lived heatwave to an abrupt end.
Temperatures will hit 31C (88F) in some parts of the country, beating the highs of 28C (82F) that made yesterday the hottest day of the year so far.

London parks were packed with scantily-clad sun worshippers yesterday, taking advantage of the blue skies.
Temperatures in St James's Park reached 28.4C (83.1F).
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/thunderstorms-threaten-abrupt-end-to-heatwave-2303348.html
さて,強調箇所のscantily-clad sunとは何のことでしょう。ここでは,「雲ひとつ掛かっていない太陽」という意味になります。『新英和大辞典』(第4版,研究社)によるとscantilyは「1.わずかな,乏しい,不十分な」とあります。次にcladとはclothe「着る,身体に衣服を着ける」の過去・過去分詞形です。これらを考慮するとscantily-cladとは「衣服が乏しい」つまり「服を着ていない」という意味になると考えられます。太陽はもちろん服は着ませんから,太陽にかかるものとして挙げられるのは雲ですね。なので「じりじりと照りつく裸の太陽」を想像することが可能です。
この文章では,ロンドンの公園にそんな太陽の崇拝者(worshipper)が日光浴をしに詰めかけている(pack)様子を伝えています。さすがに28.4度のセント・ジェイムズ・パークでは,そぞろ歩きをすることができませんね。
ちなみに画像のMad Dogs and Englishmenとはイングランドの劇作家・作曲家のノエル・カワード(Noel Coward, 1899-1973)の歌のことです(個人的にカワードの『私生活』という作品には特別に思い入れがあります)。この曲の“Mad dogs and Englishmen Go out in the midday sun.”という歌詞からもわかる通り,真昼間の外でいるイングランド人の気楽さを皮肉った歌となっています。ここから転じてMad Dogs and Englishmenとは,「とても暑い日」を意味します。このフレーズは英国スワンプ・ロックの雄ジョー・コッカー(Joe Cocker)も自らのバンド名に使っています。(Othello)
http://www.youtube.com/watch?v=HPnJM3zWfUo