常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

No mod cons

Mailに興味深い記事がありました。イングランドの家のバイヤーが,かなり古く家のようですが,買い付けに急いでいるようです。今回は,記事の見出しから英語表現を拾います。


No mod cons! Buyers spark rush for £250k house untouched in 100 years... even though it has no bathroom, toilet, drains or heating

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2005482/House-untouched-100-years-bathroom-toilet-drains-heating-sale-250-000.html#ixzz1PrVymPup


最初に見出しの意味の確認ですが,「バイヤーが250000ユーロの100年間手つかずの家を烈火のごとく(spark)買いつける。家には,風呂やトイレ,下水施設や暖房設備は付いていないのだが・・・・」となります。記事の内容も気になりますが,ここで強調箇所に注目してみましょう。このNo mod consとは何のことでしょうか。モッズ・カルチャーとかけているのかな,と思いましたが違うようです。


どうやら,このNo mod consとは,「最新ではない」という意味のようです。『リーダーズ英和辞典』(第2版,研究社)によるとmod cons「最新設備」とあり,「modern conveniences」の略だとされています。こちらは,フラットや家の販売の宣伝に使われる表現とのことです。最初に思った,モッズ・コートやヴェスパのモッズ・カルチャーのモッズ(mods)とは違うようですね。こちらのmodsはマイルス・ディヴィスに代表されるようなModern Jazz(モッズたちが愛聴したジャズのジャンルのひとつ)が由来だとされています。
続いて,mod consというフレーズは実際には,どのように使われているのか気になったので,グーグルで検索してみると,以下のようにありました。


余談ですが,私は,見出しを見た瞬間記事とは違う文脈でAll mod consというフレーズが頭に浮かびあがりました。こちらはポール・ウェラーが在籍していたイングランドのモッズ系パンク・バンドの名盤All Mod Cons(1978)です。こちらは「すべてがモッズで新感覚」という意味合いで,モッズ・カルチャーのmodsを先ほどのmod consに掛けて使われています。


ちなみに,カルチャーとしてのモッズ(mods)とは,Oxford Guide to British and American Cultureによると「若者のこと,とくに1960年代のイギリスで,すっきりしたモダンな服を着て,ファッションを追い求める人々を指す。モッズは,短くて小奇麗な髪をしており,スクーターに乗って,ソウル・ミュージックを好む。ロッカーズがライバルである。モッズとロッカーズは,バンク・ホリデー(イギリスの公的な休日で,ロウアー・ミドル・クラスの象徴のひとつ)に海辺のタウン――ドーヴァー海峡に面した保養地ブライトン――へ集まり,乱闘をする」(拙訳・加筆修正筆者)とあります。つまり,モッズとは,ロウアー・ミドル・クラスの若者が金銭もしくは時間的に余裕ができ,それまでの世代が理解できないようなファッションをして,大人と対抗しようとしたカウンター・カルチャーのことです。


モッズ・カルチャー発祥の地としてロンドンのソーホーにあるカーナビー・ストリートが有名ですが,今は観光地のひとつとなっており,私が行った時は,写真で見たようなモッズの雰囲気はありませんでした。それこそ,記事のように古き良きスウィンギン・ロンドンの家屋を買い付けたくなります。(Othello