常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

山岸勝榮先生による講演 感想(camel編)

小山本先輩,Persimmon柿生君,gacha君と共に第4回明治学院大学英文学科卒業生英語教員の会に参加してまいりました。
講演の内容についてはPersimmon君が書いてくれているので,自分は講演の後にあった懇親会での出来事を少し綴りたいと思います。幸運にも懇親会で講演をされた山岸勝榮先生とお話することができました。山岸先生との会話を通じて辞書編集者としての人知れぬ辞書に対する「情熱」を感じることができました。
辞書への情熱が強すぎるあまり,過労により電車内で何度か倒れてしまったり,運転中に意識がなくなり車をぶつけてしまったこともあるとおっしゃっていました。先生はこれらをずっと昔の思い出話のように淡々と話されていましたが,一歩間違えたら「死」にも繋がりかねない事故です。命がけで辞書作りをされていると痛感しました。
先生の凄まじい辞書への情熱は『スーパーアンカー英和辞典』(第4版,学研教育出版)の用例からも伺うことができました。例えばrecordの用例に“What’s the world record for the 100-meter dash?” “If I remember correctly, it’s 9.58 seconds.”という英文があります。陸上に詳しい方はすぐにピンとくると思いますが,この9秒58という数字はウサイン・ボルト選手が2009年8月16日に世界選手権で記録した男子100mの世界記録です。ここまでこだわる理由について先生は「辞書は用例が命だからね。使えない例文を載せてもつまらない。」とおっしゃっていました。スーパーアンカーシリーズには生きた「ことば」としての英語を学習してほしいという先生の切なる願いが辞書に込められていること伺いしれます。
辞書編集者は命を削ってまで辞書作りに励まれています。私たちは,その情熱をしっかり胸で受け止め,ボロボロになるまでその辞書を使わなくてはならないと改めて実感しました。使い古した辞書を生徒に見せながら辞書引きの楽しさを語ることができる教師を目指したいと講演終了後にひしひしと感じました。(ゼミ生 camel)