常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Waiter, there’s soup in my bug(解説)

田邉先生のご指名質問にお答えします。(http://d.hatena.ne.jp/A30/20100922/1285121106
通常、クレームをつけるとき客はウエイターに“Waiter, there’s a bug in my soup”と言うはずですが,ここでは“Waiter, there’s soup in my bug”となっています。
この店では「昆虫」をふんだんに使った料理を売りにしています。本来であれば,レストランで虫がスープに入っているなど言語道断ですが,この店は例外です。虫がメインで,スープは虫の風味を引き立てるおまけでしかないのです。見出しでは,脇役のスープが気に入らない客が「ちょっと私のバグにスープが入っているじゃないか!」と不服をウエイターに唱えていると考えられます。普通のレストランではまず起きない状況を筆者は面白おかしく見出しに込めています。
また,虫を食べた客はインタビューで「ジューシーでおいしい」と答えていました。記事の中にもsucculent wonders of edible insectsという箇所があります。succulentには「〈果物などが〉みずみずしい,水分が多くておいしい;〈肉が〉肉汁の多い(juicy)」という意味があります(『アドバンストフェイバリット英和辞典』第2版,東京書籍)。このことからも見出しのsoupはbugの中にある肉汁?を指しているとも解釈できます。普段虫がスープに入っていたら決して食べることはありません。ほとんどの場合ウエイターに申し出て取り替えてもらうのが常でしょう。しかし,忌み嫌われている虫ですが,実際に食べてみたら美味しかったというニュアンスがこの見出しに含まれていると考えられます。
自分でこのような面白い見出し(wag-the-dog titleというらしい)を発見できるよう努めていきたいと思います。ご指名質問ありがとうございました。(ゼミ生 camel)