常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Go for broke

本日のJT(09/21/10付け)一面にあったU.S. may honor ‘Go for broke’ vetsという記事の中から表現を拾います。アメリカ議会は第二次世界大戦で闘った日系アメリカ人に名誉勲章を与えることを見当していると同紙は報じています。その記事の中に以下のような箇所がありました。
Just outside the clubhouse is a memorial listing the names of nearly 800 Japanese-American soldiers killed in action. A plaque spells out the unit’s motto - “Go for broke”- a Pidgin, or Hawaii Creole English, expression meaning “give it your all.”
今回取り上げる表現は“Go for broke”です。辞書で確認すると「(あり金)すべてをかける;一か八かやってみる」と出ていました(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。記事によるとgo for brokeはクレオール言語から派生してできた表現のようです。
白畑知彦・村野井仁・若林茂則・冨田祐一(2009)『改訂版英語教育用語辞典』(大修館書店)でクレオール言語を調べると,「ピジン言語(Pidgin language)を話す親や共同社会のもとで,それを母語として習得した子ども達の話す言語をクレオール言語と言う」(p. 80)という記述がありました。同辞典でピジン言語も同様に調べてみました。その該当部分をみると「複数の言語が使用されている地域で,2つ以上の言語が混じり合って,単純化されてできた言語。特に16世紀以降,アジア,アフリカ,中南米,ハワイなどのヨーローッパの植民地で使われた」(p.231)という説明がされていました。以前田邉先生から自分たちがよく身近に使う“Long time no see.”も実はピジン言語から生まれた表現だと教えて頂きました。身近な英語にもピジン英語は潜んでいるようです。
記事の中にピジン言語を話すハワイ人兵士と日系アメリカ人兵士の会話がありましたので引用します。ハワイ人兵士は日本軍が攻めて来た時,同僚兵士が日本軍側にひるがえるのでないかと疑いを持っています。
“Eh, if dey come, who you going shoot? Dem or me?” he asked, in Pidgin.
The Japanese-American replied, “Who you t’ink, stupid? Me j’us as good American as you!”
発音も文法も語彙もbrokenな英語ですが十分意思疎通はできていますし,これも立派な英語と言えるでしょう。この日系アメリカ人の質問に対する回答からも“Go for broke”の精神がにじみ出ているように感じられました。(ゼミ生 camel)