常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

whistle-blower

Rights of whistle-blowers
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/ed20100911a2.html
Japan Times(09/11/10)のEDITORIALにあった国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」のメンバー2人による鯨肉窃盗事件に関する記事の見出しから,whistle-blowerという単語を拾います。
まず辞書でwhistle-blowerを調べてみると,「(悪事などの)内部告発者」とありました(『プログレッシブ英和中辞典』小学館)。これはスポーツなどの審判を思い浮かべればわかりやすいと思います。ここでのwhistleは審判が吹くそれで,blow the whistle on Aで「(審判が)A(選手)に対して笛を吹く,罰則を適用する」という意味に加え,「A(人の悪事)を当局に通報してすぐにやめさせる,内部告発する」という意味があります(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。
さらに注目したいのが,whistle blowerをめぐる日英のニュアンスの違いです。日本語で考えると「内部」という部分に少しnegativeなニュアンスが感じられるのに対し,英語のwhistle blowerは「審判」というところからもわかるように「正義」というpositiveなニュアンスが感じられないでしょうか。記事にもAlthough Japanese public opinion was largely unsupportive of Greenpeace Japan, the United Nations Human Rights Council's Working Group on Arbitrary Detention told the Japanese government that the arrest of the two activists violated the Universal Declaration of Human Rights. Its written opinion said that the activists "sought to expose criminal embezzlement within the taxpayer-funded whaling industry" and that "citizens have the right to investigate and expose evidence on public servants suspected of corruption."とあります。
これについて『スーパーアンカー英和辞典』(同上)に以下のような解説がありました。
「日本では内部告発(whistle-blowing)は所属する組織に対する背信行為と受け取られることが多く,人々はそれを行うことをちゅうちょする傾向が強いが,アメリカなどではむしろ正義を守るための当然の行為と解釈されるのが一般的である。特に公務員違法行為を告発する人を保護するための法的措置もとられる。」
悪いことは悪い!筋が通っていますね。そういえば昨日も勇気あるwhistle-blowerを見かけました。ここは日本ですので,詳しい事情の明記は避けたいと思います。(院生 小山本)