常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Hey doc, stay a while

本日のDY(08/13/10付け)小見出しから英語表現を紹介します。まずはその見出しとリード文をご覧下さい。

Hey doc, stay a while
Rural areas in the United States face a shortage of doctors, with many young MDs leaving after a few years citing isolation and inconvenience.
記事はアメリカの地方で起こっている深刻な若い医師不足を伝えるものでした。

ここで使われている“doc”に深い意味が隠されているのではないかと思い調べてみました。まず辞書に載っていたのはやはり“doctor”の略で「先生」でした(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。しかし,補足説明として「▶呼びかけ語としては,患者も用いるが,同僚医師・友人・知人などが用いる方が多い」と記されています(『スーパーアンカー英和辞典』同上)。以前Back to the Future(1985)という映画の中で主人公マーティ(Marty)は未来に行ける車を開発している博士をいつも“doc”と呼んでいたのをふと思い出しました。マーティーはもちろん博士を尊敬しているものの,呼びかけ方には友達のような親しみが込められていることがわかります。

しかし,他の辞書で調べてみると“doc”には上記の意味以外に「《見知らぬ男性への呼びかけ》あんた,お前さん」という意味があることがわかりました(『プログレッシブ英和辞典』小学館)。

したがってこの見出しでは2つの意味を掛けて,すぐ出入りの激しい病院に
来た新人医師たちに対して現地住民が「ちょっとあんた,(すぐやめないで)しばらくとどまりなよ」と言っているのではないでしょうか。

住んでいる場所によって医療の水準に格差があるのは日本でも問題となっています。地方の医療現場で善意をもって人の命を助けようとする医師ほど,時間外労働が多くなり激務になります。さらに都市部に比べて報酬が少ないのが現状。この現実を打破する方策はないのでしょうか。この“Hey doc, stay a while”には地方医療現場の問題点と住民の人々の医療に対する願いが表れているような気がしました。(ゼミ生 camel)