常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

LET雑感(小山本編)

8月3日から3日間にわたりLET(外国語教育メディア学会)の50周年記念大会が横浜サイエンスフロンティア高校で開催されています。私は昨日(3日)のワークショップ(WS)に参加し,本日(4日)も研究発表を見てきました。後者に関してはpersimmonくんかgachaくんあたりがまとめてくれると思いますので,前者WSの雑感をまとめたいと思います。
WSは1部と2部でそれぞれ1つずつ,計2つに参加してきました(参加したWS名はあえて伏せさせていただきます)。印象を一言でまとめると「依然として構造主義の色合いが濃い」ということです。
「コミュニケーション」という言葉が日本の英語教育に導入されて20年(田邉,2010)。この20年の間に応用言語学,第2言語習得,認知心理学などの分野から様々な知見が入ってきました。「文脈」や「場面」,コトバの「機能」や「働き」といった言葉も広まり,こういった言葉を挙げると「何を今更」と思う方もいるかもしれません。
しかし,(たまたまかもしれませんが)参加したWSの中心的活動は戦後の構造言語学と習慣形成理論に基づいた,いわゆるListen&RepeatやSubstitution Drillのようなものが多く,コトバの「機能」や「働き」,「自動化」という表現も飛び交うものの,それらの意味も日頃田邉先生からご指導して頂いているものよりも浅いレベルで捉えられているような印象を受けました(もちろん,すべての先生方がそうというわけではありませんし,2つのWSに参加した過ぎないので,一般化が危険だということは承知しています)。
生意気なことを言う大学院生と思われてしまうかもしれませんが,今回のWSでは,理論と実践の乖離を感じました。そして同時に,そのような"まなざし"を与えてくださった田邉先生のご指導への感謝も。
「コミュニケーション」や「文脈」,「場面」,コトバの「機能」や「働き」といった言葉の説明など,肝心なところは(わざと)ぼやかしています。詳しくは参考文献で挙げた田邉先生のコラムや本を一読していだだれれば幸いです。
ちなみに,大会は明日が最終日です。ここでは挙げませんでしたが,研究発表の中にはすばらしいものも多く,また最新鋭のメディア教材の展示も充実していますので,機会がありましたら是非足を運んでみてください。(院生 小山本)

【参考文献】
田邉祐司・他(2009)『一日3分脱「日本人英語」レッスン』朝日新書.
田邉祐司(2010)「コミュニケーションに広がりと深みを」『英語教育』4月号,大修館書店.