常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

nail-biting

こんにちは,pearです。前回に続き,今回もワールドカップ記事を読んでいて見つけた表現を取り上げます。

以下の一文はThe Asahi Shimbun(2010年7月2日付)からの引用です。
While Japan's nail-biting World Cup defeat against Paraguay may long be remembered for a single penalty shot that failed to find the net, the protagonist in the tragedy at Pretoria has drawn an outpouring of sympathy in Internet chat rooms and microblogs.
http://www.asahi.com/english/TKY201007010397.html

この記事ではW杯で日本がパラグアイに敗れてしまったことが述べられています。ここで注目したいのはnail-bitingという単語です。もちろん文字通りに「爪をかむ」と訳すことができますが,もう少しそこから発展させて考えてみましょう。爪をかむしぐさから,思わず「ちっ」と言ってしまいそうなほどの悔しさがはっきりと感じとれることでしょう。

確認のために『新英和中辞典』(第5版,研究社)をひいてみると,bite[chew] one's nailsで「(神経質に)つめをかむ,つめをかんで悔しがる」とありました。記事ではnail-bitingと形容詞的に使われていますね。これをふまえてJapan's nail-biting World Cup defeat against Paraguayを上手く訳すとすると,「(W杯)日本,パラグアイに惜敗」といったところでしょう。

また,「惜敗」を表す言い回しが他にもあるのかが気になったので調べてみると,『新英和中辞典』(同上)にlose by a neck「首の差で負ける;惜敗する」とありました。ただし,これはneckという語からも想像できるように,主に競馬などの競技での惜敗を表すようです。

nail-bitingやlose by a neckのように,体の一部を用いることで,身体に強く根差すほどの悔しさや試合の惜しさを表すことができるのですね。言葉の中に含まれた身体性の面白さを感じました。

明日はb.m.さんです。よろしくお願いします。(ゼミ生 pear