常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

物笑いの種

THE DAILY YOMIURI(07/06/10付け)のスポーツ欄,ワールドカップ特集を読んでいる最中思いがけない発見がありました。その発見に至るまでの一部始終を綴りたいと思います。記事は南アフリカでの敗戦後,ブラジル選手が母国ブラジルに帰国したことを報じるものでした。
Brazil sacks coach Dunga
Players pilloried on return to Rio
訳し方に戸惑ったのは“pillory”という語です。辞書で意味を調べると名詞では「《史》さらし台《罪人の頭と両手を固定する刑具》」,動詞では「1.〈人〉をさらし台にさらす.2.《正式》〈人〉を笑い物にする《◆通例受身》」と出ていました(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。この単語からわかるように監督だけでなくブラジル選手にも非難が集中していることがわかります。
ふと例文に目をやると,“He was pilloried for his foolish remark.”(彼は自分のばかげた発言でもの笑いの種になった)という文がありました(『ジーニアス英和辞典』同上)。まさかpilloryが「物笑いの種」と訳されているとは…驚きでした。pilloryの他に物笑いの種を言い換えできないかと探してみると“laughingstock”という単語に行き着き,その意味は「《略式》[通例 a〜]嘲笑(ちょうしょう)の的,笑いもの[種(ぐさ)]」と記されています(『ジーニアス英和辞典』同上)。またその例文の中に“The team became a laughingstock by losing every game.”(チームは試合という試合に負けて笑いものになった)と出ており,最初の例文を言い換えて“He became a laughingstock by making a foolish remark”とも言えそうですね。
以上pilloryの二つの意味を総合すると,見出しは国民が代表選手を「嘲りの目」で見ていることが感じ取れます。
今回は辞書の例文から新しい発見がありました。辞書で単語を調べるとどうしても第一義の定義だけ確認して辞書を閉じてしまいがちですが,例文からも沢山学べます。今後は,単語を深い意味で一つ一つ単語を調べ,単語から単語へと足跡を残しながら勉強に励んでいきます。(ゼミ生 camel)