常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ご指名質問 #22に答えます! サッカー表現

みなさん,遅くなりました,Persimmonです。ご指名質問 #22「Japan vs Holland」に挑戦します。
http://d.hatena.ne.jp/A30/20100620/1276998042
それにしてもオランダ戦についての記事には様々な面白い表現があるのですね。一つずつ紹介していきますので,最後まで付き合ってくれると嬉しいです。
・Japan came within a hair of taking a point off the Netherland but came out on the losing end.
まず注目したいのが,a hair of~とcome outという表現です。
ジーニアス英和辞典』(第4版,大修館書店)によると,a hair of~は「(1本の毛ほどの)わずかな差」という意味で使われています。例文として,I was within a hair of being late.「もう少しで遅れそうになった」があります。
・come out
ジーニアス英和辞典』(同上)によると,「[試験などで](…位で)ある」という意味があります。そして例文がありHe came out (on) top in the test.「彼はテストで一番だった。」と上記の英文と同じ表現が使われていました。以上の2点から,「もう少しのところで点をあげられたのに,結局は負けてしまった」という「対比の日本語」に直せますね。
・Japan 's second round chances now rest on the June 24 game
ここでのポイントはrestの使い方です。普通はrestと聞くと,「休む」などという意味がすぐさま浮かんでくると思いますが,上記の英文においてそれでは意味が通りません。LDOCEを引いてみると,rest onでto depend on somethingやto be based on a particular idea or set of factsという意味がありました。よって,問題の英文は「日本の決勝トーナメント進出のチャンスは6/24の試合にかかっている」と試訳が出来ます。
・succeeded in frustrating the Dutch all right
は一見簡単そうな英文ですが,据わりの良い日本語にはどうしたらよいでしょう?そこで,注目したいのがall rightという表現です。これは主に米の表現で,『ジーニアス英和辞典』(同上)によると,「[文・節の最後で]申し分なく,立派に,上手く」という意味が載っていました。そして,この言葉の後には「〜したものの,しかしながら〜」という文脈で使われるようです。つまり「(前半は)オランダにゲームをつくらせないことに成功したものの...」という意味になると思います。
・The Dutch had enough of lethargy
今回のポイントは「どのように据わりの良い日本語に訳すか」です。have enough ofですが,『ジーニアス英和辞典』(同上)によると,[enough of~名詞]で「(うんざりするほど)十分な…」という意味になります。そしてlethargyは,「倦怠,脱力,無気力」という意味で,ここでは前半45分日本の固い守備(determined defense)に対し本来の実力を発揮できていなかった攻撃陣を表しています。実況の松木さんもおっしゃっていましたが,確かに前半のオランダ攻撃陣にいつものような迫力は感じませんでした。以上の点から,上記の英文は「前半の冴えない攻撃にうんざりしてか,後半のオランダは…」のように続いていくと思われます。これも一つ前の表現と同じレトリックです。
・who laid the ball off for Sneijder on the box. Sneijder whacked it on his first touch
ここで英文を解釈するのに障害となるのは,lay ~ off,on the box, そしてwhackではないでしょうか。
まず,lay offは『ジーニアス英和辞典』(同上)によると,「一時解雇する」のほかに「〈ボール〉をパスする」という意味があります。そして,上記の英文でのboxとは,「ペナルティーエリア」です(『ジーニアス英和辞典』同上)。
最後にwhackには,「ピシャリと打つこと,強打」という意味があり(『ジーニアス英和辞典』同上),ここでは,強烈なミドルシュートを打つ動詞として使われていますね。
よって,上記の英文は,「ペナルティーエリア内でスナイデルにボールが渡り,ダイレクトで強烈なミドルを放った」のように解釈出来ます。思い出したくもないシーンですが,いい勉強になりますね。
・Okada threw on attacking options Shunsuke Nakamura, Shinji Okazaki and Keiji Tamada and even pushed defender Tulio up into the forward line.
throwはサッカーではお馴染みの「選手交代」,すなわち「投入」のことです。on attacking optionsは「攻撃的な選手交代のオプションとして」くらいの意味でしょうか。そうすると,eve以下のDFのTulioを前線にあげたこととの整合性ができます。
・Okazaki fired a great chance over the bar
Fireには多くの意味がありますが,ここは動詞でto shoot bullets or bombsです(LDOCE)。サッカーでは,シュートを打つという意味で捉える事が出来ます。a great chance(せっかくのチャンス)を力が入って(もしくはDFに仕事をさせられなく),バーを越えて失敗してしまった。よって上記の英文は「岡崎選手は最大のチャンスを台無しにしてしましました」と訳してみました。もうひとつのご質問は今,鋭意作成中です。お待ち下さい。(ゼミ生persimmon柿生)