常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

問いかけ#19に挑戦

田邉先生の問いかけ#19に挑戦いたします。質問内容はレッドソックス松坂投手のノーヒットノーラン(a shutout,a no-hitter)を阻止したカストロ選手が試合後述べた「とんでもない投球」の原文は何かというものです。
THE DAILY YOMIURI(5月24日付け)のスポーツ欄に原文がありました。該当箇所の原文を載せます。
“He was throwing a heck of a game. I was just trying to make contact,” Castro said.”
したがって,「とんでもない投球」とは”a heck of a game”となります。その語をLONGMAN Advanced American Dictionaryで調べると,”used to emphasize that something is very big, very good, very bad”と明記されていました。また,英和辞典で調べても「《話し言葉》大変な;すごい,エキサイティングな」と載っていました(『プログレッシブ英和辞典』小学館)。面白いことにこちらの辞書では悪い(bad)という意味がなくなってしまっています。heckはhellのいわゆるぼかし表現(hedge)です。このような現象はdamnがdarn, dang,shitがshootになるなど他にもたくさんあります。hellの意味は天国(heaven)の対の関係にある「地獄」ですよね。決して良い意味ではありませんが,awesomeやdeadly同様,悪い意味が良い意味にも転用され,使われるようになった典型的な例の一つだと考えられます。
言葉は脈を打つように生きていることを改めて実感しました。辞書や辞典が何度も改訂されるのは,人々が必死に言葉に取り残されないようにしているためかもしれません。言葉を操るのはヒトですが,言葉に置いていかれないようにしたいと思います。(ゼミ生 camel)