常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Which comes first, "a" or "an"?

教育実習の準備に勤しんでいるcamelです。中学校で使う教科書は田邉祐司先生も執筆者の一人として加わっておられるNEW CROWN ENGLISH SERIES New Edition 1(三省堂)です。教材研究をしていると,早速,難題にぶつかってしまいました。
Lesson 2で登場人物である久美とエマは友達のミンの家に遊びにいきます。問題の箇所は家の中で会話が弾んでいる場面です。
Kumi: This is a nice kite.
Ming: Thank you. It is an animal. A bat.

実に短いdialogueです。なんでこんな簡単な箇所でつまずくのかと疑問に思う方もいるかもしれません。語彙や内容自体は全く難しくありません。厄介なのは,日本人が特に間違いやすいと言われる「冠詞」が含まれていることです。しかも,見事にa/anが混じっているではありませんか。「せんせー,なんでanimalの前はanなのー?」と訊かれる可能性は十分にあります。その質問に沈黙して,立ち尽くす自分を想像するだけでも,公開処刑台のように感じます。(少しオーバーですが。)
「冠詞のa/an/the」を英語導入期の中学一年生(最近では外国語活動がありますが)に教えるべきかどうかという議論はとりあえずここでは置いておいて,なぜ冠詞のa/anが生まれたのかというのは知っといて損はないのでしょうか。幸いにも現在,田邉祐司先生も連載を執筆されている『英語教育』2010年2月号(大修館書店)のQuestion Boxに参考になる文章がありました。回答者の一人である八木克正先生は以下のように述べています。
「教室では,『子音で始まる単語の前ではaだが,母音で始まる単語の前ではanだ』と教えています。つまりaが基本(unmarked)であり,anが例外(marked)の扱いになります。もし,『なぜ母音の前ではanになるのか?』と問われと,答えは『発音がしやすいように』となるでしょう。これで間違いではありませんが,歴史的にみると実はanが基本でaが派生形です。もともと子音の前であろうが,母音の前であろうがanでした。ところが,an bookのように子音が連続するのはやはり発音がしにくい。そこでanのnの音を落としてa bookという習慣が生まれたのです。ではこのanはどこから来たのでしょうか。実は,このanはoneと語源が同じです。…」(p. 77)
aが最初だと思っていたら,実はanが最初であって,綴りが似ても似つかないanとoneが同語源なんてさらに驚きではないでしょうか。鋭い生徒は「だからa/anは1つ(one)の物にしか付かないんだね」と閃くかもしれません。ただルールの如く「母音の名詞の前は何が何でもanだ!」という公式を生徒の頭に埋め込むのではなくて,このようなエピソードを少しでも話してあげれば,生徒は完全にはわからなくとも,「冠詞」という得体の知らないものを少し身近に感じることができるかもしれません。(ゼミ生 camel)