常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

clutchとcrutch

UGさん(気軽に呼ぶな!—by UG)から課題をいただいたのでまとめてみました。
まず,clutchには「ぐいと掴むこと,しっかりと握る」という意味から派生して「魔手,手中,支配」という意味があります(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。なので,in the clutchという表現はThe man had Yoko in his clutches「その男は洋子を手中に収めた」のような使い方が出来ます(『ジーニアス英和辞典』同上)。
続いてのclutch hitterですが,手元にある辞書には載っていませんでした(トホホ…)。なので,インターネットという文明の利器の力を拝借。Wikipedia(in English)によりますと,clutch hitterは試合を決めるヒット(game-deciding hit)を打つコツ(knack)を持っている打者の事をい言うようです。詳しくはhttp://en.wikipedia.org/wiki/Clutch_hitterへ。これは,clutchの「ピンチ」(野球用語)という意味からきていると考えられます(『ジーニアス英和辞典』同上)。
そして一番大事なのは,上記の表現がcrutch(rです)と関係があることです。『ジーニアス英和辞典』(同上)によると,crutchには「[比喩的に;しばしば否定的ニュアンスで]支え,支柱;支援,頼り」という意味があります。In the clutch,clutch hitterのclutchにも決していい意味合いがあるとは思いませんよね。こんなところで接点があるなんて…。
このように一つの言葉からまるで旅をするように意味が派生していきます。その際に昔,聞いたことのある意味・用法と再会するようなこともあるのではないでしょうか。そう,まるでtrip down memory laneのように…(ゼミ生persimmon柿生)