常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

過半数獲得へのラブコール

先日行われた英国内での選挙で最多議席数を獲得した保守党ですが,総議席数の過半数を獲得することはできませんでした。そこでTHE DAILY YOMIURI(2010年5月9日付け第4面)の見出しにはこうありました。
Big parties woo kingmaker in U.K. poll
しょぼいながらも一応,最多議席数を勝ち取った保守党,そしてBrown舌禍のあおりをもろに受けた労働党の両党が過半数獲得へ向けて少数派の有力な政治家たちへ向けて動きを見せているといった内容の記事です。
見出しに使われているこのwooには「<人>に〔…するよう〕せがむ;<有権者などに>支持をせがむ,《やや古》<男が女に>に求婚する,…を口説く;…を説得する」などの意味があります(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。これらの意味から,第一党である保守党のキャメロン氏,そして労働党のブラウン氏は少数派への「ラブコール」といった感じでしょうか。
また,小見出しには;
But Liberal Democratic leader does not quickly respond to opponents’ overtures
とあり,すぐには答えを出さず,さらには記事の中でもdangle「<誘惑物・望みなど>をちらつかせる,ちらつかせる」,tantalize「<人・動物>を(望みを叶えてやるかのように)じらす,からかう」(『ジーニアス英和辞典』同上)などの単語を使うことで,政党間のやり取りをちょっとした恋愛の駆け引きのように見せる言葉遊びがされているのではないかと思われます。
「かたりべ文化」(cf. 外山滋比古)である西欧での事なので,相当なアピ−ル合戦なのでしょうが,両党首は今後も自民党ら少数派に煙たがられないよう口説き落としていく必要があるでしょう。私もさらに語彙力をつけ,高度な単語や表現も選びながら表現力豊かで,さらには口説き落とせるような文章を書けるようになれたらと思います。(by Almost God)