常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ゼミの骨格

田邉祐司ゼミ,別名,「豚の穴」の紹介文です。これを読むと,ゼミの骨格がわかると思います。(by UG)

「日英通訳コミュニケーション・ゼミ」

 このゼミはどちらかといえば「実践的なゼミ」といえます。教育方針は2つ。まずは学習者が自分の学習に責務を持って学ぶ「学習者中心主義」です。目標,学習計画,実行・修正,成果などの学びのプロセスを自分で「ポートフォリオ」(計画・学習履歴ファイル)にまとめ,学習を「自己モニター」していきます。でも,勉強はなかなか一人では継続できませんよね。そこでゼミ生同士がお互いに助け合って,学び続けるという「共同学習主義」もとりいれています。それが2つ目の方針です。そんな方針の下,ゼミの目標は:

異文化コミュニケーションに対応できる基礎的な日英間の通訳・翻訳力

と規定しています。これを平たく言いますと,通訳者養成法の「おいしいところ」だけとって、ゼミ生の英語および日本語両方の言語能力を高めながら,卒業までには初歩的な通訳や翻訳なら何とかこなせるよ,少なくともたじろぐことがないよ,といったレベルに「みんなで行こう!」(理想ですが…)といったところでしょうか。しかしこれはあくまで表向きであって,現実には:

個人目標:それぞれの個人的な目標

が本来のものだと考えています。個人目標はさらに:

長期目標:卒業後の進路—これからの生き方
短期目標:3年次終了時期,4年次終了時期
小 目 標:小刻みの目標

などに分かれ,それぞれをみんなに考えてもらっています。ゼミ目標と個人目標,それから卒業後の進路がピッタリ一致すれば申し分ないのですが,そうはいかないのが世の中の常。事実,ゼミ生には英語とは縁もゆかりもない分野に将来をかけている者もいれば,ハード・ロックの歌手を目指している強者もいます。それはそれでよいと思っています。いずれにしても,ゼミではこうした目標設定ということを大切にしているのです。そして目標をこなすための過程に不可欠の「実行・修正・継続」といった学びのプロセスにも力点を置いています。
 目標を達成するための方法・内容(やり方と教材)は「企業秘密」(?)です。でも簡単に述べますと,まず3年次には語彙力,音声力,文法力を三本柱にしています。通訳法を利用させながら,かなりの量の練習をこなします。例えば,単語帳は1年間で最低4冊はカバーします。リーディング,リスニング,スピーキングも相当量になります。その結果として,俗な言い方ですが,3年次終了までにはTOEIC 800台,英検準1級レベル程度に到達する学生が出ます。4年次には,語彙力,音声力,文法力の三本柱をさらに拡充し(またまた4冊以上の単語帳!),よりレベルの高い教材で,実践の通訳的なタスクをふんだんに盛り込んでいます。資格も世間の人がうらやむほどの成果をあげてくれます(ただし全員とはいかないのも,またヒトの常)。4年次の「通訳コンテスト」は一応,卒業研究ですが,実際にはその公開練習のようなものです。
 こう書きますと,「言語スキルべったり」の感じがしますが,もちろんそれだけではありません。異文化間の橋渡し役としての通訳者に欠かすことのできないコミュニケーション理論(特にinterpersonalやpublic communication theory),さらには社会科学,人文科学,自然科学の諸領域の中で一般的な知識の拡充は必須のものです(エライ人はとかく引用したがるものです!)。先日も何かのニュース記事をやっていて,そのタイトルに”A Celtic Tiger’s Jewel Burning Bright”というのが出てきましたが,すぐにW. Blakeの詩を下敷きにしていることに気づいた学生がいました。
 冒頭で「実践的なゼミ」書きましたが,何となくおわかりいただけと思いますが,ただ単に言語スキルやパフォーマンスを繰り返すという意味の実践ではありません。このゼミは,何のために学ぶのか,学び方の学び,学ぶことの喜びなど「学び方」にかかわるあれこれを自分で実践していくゼミでもあるのです。生きることは学び続けることだと信じていますから。ゼミを通して,今後の生き方の指針になるようなことを学んでいってほしい,そういう願いを「実践的」ということばに込めているのです。以上で,うちのゼミの概要とさせていただきます。

*なお,本学育友会HPにもゼミ紹介の記事があります。あわせてご覧ください。
http://www.ikuyuu.com/newsletter/detail96.html