常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

オレゴン州立大学留学まとめ

今年の九月より三ヶ月間、オレゴン大学へ留学して参りました。私の留学プログラムはセメスター留学というもので、留学先の大学にて一学期相当期間、現地学生と同じ正規授業科目を履修、単位取得を目指すものです。自分の専門科目を履修するため、私の場合はlinguistics3科目12単位を選択、履修しました。語学留学とは違い、語学研修がありません。現地到着からおよそ1,2週間後には正規授業が始まりました。初めての海外に加え、稚拙な語学力もあり、大きな不安を抱えたままに迎えた留学生活は、駆け抜けるように過ぎていきました。

私がオレゴンで過ごした3ヶ月を思い起こしてみると、ただただひたすら勉強に追われていたように思います。授業が始まってからは、寮の自室よりも寧ろ、図書館で過ごした時間の方が多いかったのではと思うほどです。思い出の場所はと聞かれると、図書・館2階のQuiet Areaと答えるのが適当かもしれません。授業が本格化すると、いよいよ忙しく、週3,4日の徹夜も珍しくなく、特にMidterm期間は週に一度もベッドで寝る日が無い事さえありました。テストや課題の提出が近くなると、授業ごとに課されるReading Assignmentを次第に消化しきれないようになり、授業の内容についていくのが厳しくなり、次回のテスト・課題の準備にますます苦労するようになるという、悪循環を絵に描いたような生活を送っていました。体調を大きく崩していたらと思うとゾッとします。ともかく、ある程度満足の行く成績を取ることはできたようで、苦労した甲斐があったというものです。

他の留学生も同じように忙しくしていたかといえば決してそうではなく、同じく正規授業を取っている学生であっても、図書館に行ったことも無いという友人もいたので、履修している授業に寄ってはそれ程忙しく無いものもあるようでした。日本人留学生の友人のほとんどはそれ程忙しい様子でなく、様々なイベントへ参加したりパーティーに行ったりと留学生活を満喫していたようです。一方の私はひたすら図書館で勉強に追われていたもので、彼らの生活振りを羨むことは少なくはなかったように思います。Midterm期間以降はほとんどの時間を図書館で過ごしていたため、新たな友人との出会いや、現地学生との交流も徐々に少なくなり、留学生活を謳歌している彼らと比べては落ち込むこともよくありました。実際、せっかくの留学を無碍にしてしまっていたのでしょう、この点に関しては後悔してもしきれません。

英語力が成長したと、胸を張っていえるかと問われれば、正直に申し上げまして、実感するほどの成長はできたとは思いません。WritingとReadingは日本にはいる時と比べると随分な量をこなしました。特に後者は、私の人生において、最も多く英語を読んだ3ヶ月になった事は確かです。ですが、早く読めるようになったかと問われれば、閉口してしまいます。毎日欠かすことなく読んでいたので、その変化に自分では気づいていない、という事であれば良いのですが。少なくとも、大量の英語を読むことへの抵抗は無くなった事は、数少ない成長したといえる点になるでしょう。Listeningについても、英語を聞かない日はありませんでしたが、実感できるほどの成長はできたか。Speakingについては、成長できたとはとても思えません。この2点については、私が図書館に籠りっきりだったため、留学前に想定していたほど英語でのコミュニケーションを取れなかったことに起因するのだと思います。語学力の成長という点においては、私の持ち合わせていた語学力、専門科目への造詣の浅さ、あるいはコミュニケーション能力など、私の至らなさが足枷になってしまったのでしょう。
どうも後ろ向きな事ばかりを書いてしまいましたが、何も留学生活は辛い事ばかりではありませんでした。やはり、多種多様に渡るバックグラウンドを持つ人々と出会い、コミュニケーションを取ることができたのは大きな刺激になりました。印象的だったのは、彼の母国チベット言語学の博士学位を取るために留学していた方です。彼は私よりも随分年上でしたが、同じく1termだけの留学という共通点もあったためか、仲良くなるのにそう時間はかかりませんでした。不思議なもので、英語で話をしていると、お互いの年齢差を意識することはほとんどありませんでした。チベット言語学の授業をする際、‘はし’(橋/箸)を例に、アクセントの位置による語義の変化を説明するなど、日本語を取り上げることも少なくないそうです。外国人はもちろんですが、同じ日本人との出会いも留学の魅力の一つです。京都大卒で研究職に従事していて、研究のためにオレゴン大学で一年間滞在している方、慶応大からの留学生で将来は国連で働くことを志している友人など、彼らと過ごした時間も充実したもので、私の生涯において大きな財産になることでしょう。

私の目には、ユージーンで出会った人々はみな魅力的で輝いて映りました。将来への展望をしっかりと持ち、やりたいことも明確で、語学力は言うに及ばず、人としての魅力的に溢れている人ばかりでした。彼らに劣等感を感じないかと言えば嘘になります。思えば、徹夜で勉強し続けていたことは、能力で劣る私が講じることのできた唯一の手立てだったのでしょう。現状、何かを成し遂げるにはあまりに未熟で、人を惹きつける何かをも持ち合わせているとも到底思えません。そうあり続けるかどうかは、これからの私次第です。自らの、周りよりも劣っている事への自覚は、焚き付けてくれます。いつか再会した時、留学先で出会った友人達を見返すことのできるよう、あるいはUG先生や先輩方、同期の仲間、費用を捻出してくれた両親に認めてもらえるよう、少しずつ前進していければと思います。数年後振り返った時に、この三ヶ月の留学経験は決してではなかったと、おかげで大きく成長することができたのだと、胸を張れるよう励んでいきます。最後になりますが、UG先生をはじめとする教授の方々、国際交流事務課の皆さま、支援してくださった全ての方々に感謝申し上げます。(あいづ)