常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

grass-roots 復習

政府は6月に福島第一原発事故被災地の「居住制限区域」などの避難指示を2017年3月までに解除する方針を固めました。NYTによると、依然として高い放射能レベルが続いているにもかかわらず解除するという政府の決定に対して、多くの住民が反対の声をあげているそうです。

This grass-roots rebellion of sorts underscores a deep disconnect between victims in Fukushima and the government in Tokyo, a schism that has plagued Japan’s response to one of history’s worst nuclear disasters.

http://www.nytimes.com/2015/08/09/world/asia/japan-fukushima-nuclear-disaster-iitate-return-plan.html?ref=world

取り上げる表現は”grass-roots”です。
ジーニアス英和辞典第4版(大修館書店)』には「民衆の、民衆に根ざした;根本的な」という意味が載っていました。LDOCEには名詞で”the ordinary people in an organization, rather than the leaders”と定義されています。また、「グランドセンチュリー英和辞典(三省堂)では「《限定的に》草の根の、民衆レベルから起こった」という訳し方がされていました。ここでは民衆による、または草の根レベルの反乱とも呼べるものが被災者と政府の溝を深めているということになります。

インターネットで調べてみると、”grass-roots”という言葉の起源は19世紀のアメリカであるとされています。当時アメリカはゴールドラッシュで、金は草のよく茂った山脈の土壌の表層の下に隠れていると噂され、やがて草の根は末端の民衆の意味を表すようになったとのことです。また、”Grassroots””は一般市民、大衆によって行われる「草の根運動」も意味します。日本では松陰が唱えた言葉の中に「草莽崛起」というものがあり、これは草の根運動とほぼ同義だそうです。

政府はオリンピックに向けて東京の安全性を強調していくことが目的のようですが、被災者の方々が今後も安全に暮らしていけるように住民たちの声に耳を傾けてほしいものです。(bookmark)