常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ニューカッスルだより

UG先生

大変ご無沙汰しております。ニューカッスル大学大学院のOthelloです。当地も赤と黄色に染まり始め、気温も下がって来ました。日本はいかがですか?急な連絡で大変恐縮ではございますが、ご報告をさせて頂きたいと思い、メールを致しました。長くなってしまうので、いくつかに分けます。

【一年間の修士生活の流れ】
日本の修士とまったく違うことは、イギリスの修士は1年であることです。つまり、修士論文を一年のうちに書かなければいけません。しかしふたを開けてみると面白いシステムで、一年を通して「ポートフォリオ」を制作します。これが修士論文の代わりになります。最初のセメスターで興味がある分野の先攻研究をまとめます。次いでセメスター2でデータなどを発表します。最後にセメスター2を6月に終え、スーパーバイザーを選び、9月までの3ヶ月の間に本論を書きます。この3つの行程からなる「ポートフォリオ」を制作することがニューカッスル大学の修士学生のビジネスです。

【モジュール】
街ではGeordieの英語に戸惑うことが多々ありますが、大学では「イギリス」人の先生はRP、カナダ人の先生はGAを喋るので、かなりわかりやすいです。ニューカッスル出身でニューカッスル大学の生え抜きの先生は少ないのですが、その先生もRPを喋ります。

セメスター1では、モジュールは5つ取っています。まず必修科目としてLanguage and Cross-Cultural CommunicationとResearch Method in CCCです。前者は、言語とコミュニケーションにおける言説について学ぶ講義です。大教室で行われる授業で70人ほど受けています。2時間通して行われる授業で、圧倒的な情報量に戸惑うこともありますが、すでに日本で学んだことも多いので、なんとかやっていけています。後者は、研究を進める上での心得や方法論を学ぶ講義です。ニューカッスル大学はリサーチが強い大学で、特に質的研究が強く、これについてかなり時間を割いて講義が進められています。

次いで選択科目ですが、一番取りたかったAlan Firth先生のELFの講義、Language Policyを履修しており、さらにオーディティングとしてVivian Cook先生の講義を取っています。どの講義にも言える事ですが、読む量が大変多く、少なくとも一つの講義に対し論文4本はあります。多い時だと論文5本に本2册など・・・。それでも自分の興味のある講義なので厳しくも楽しい学生生活をしております。

【決心した事】
毎回の講義で決心したことがあります。それは、必ず質問や意見を言う事です。大教室の講義でもどんな授業でも最低1つか2つはするようにしています。これをするのには2つの目的があります。まず、人前で英語を話すことに対する抵抗感をなくす事です。次いで、単純に自分の考えることをアウトプットすることで、直接先生に意見交換をすることです。簡単なことかもしれませんが、文法や発音、簡潔さ、表現など瞬時に選んで質問しようと毎回努力しています。

【研究や課題】
どのモジュールにもエッセイの課題があります。どのモジュールもジャーナル一本くらいの量 (6-7000 words)を書きます。今取り組んでいるのは、Language Policyに関する課題です。何について書こうか悩んでいましたが、固まった案としては「日本の英語教育における2つのパラダイム教養主義実用主義」です。わたしが取っているLanguage Policyの講義では日本がオリエンタリズムの象徴のように見られている感じがし、日本の英語教育の素晴らしい部分と問題点を先生および学生に提示することで、もっと日本について知ってもらえると思ったので考えました。エッセイの目的としては「1)日本の英語教育における中心的および周縁的な言説について論じ、2)ディスコース・アナリシスによって、日本の英語教育に見られるギャップを浮き彫りにする」ことです。とくに日本の英語教育の歴史の流れを踏まえ、日本の英語教育のPolicyおよびPlanningと人々の認識のギャップを明らかにしたいと考えています。おそらく歴史について瞥見しようと考えたのは、UG先生の下で勉強をしたからだと強く思っております。

【おわりに】
最後になってしまいましたが、連絡が遅くなってしまい大変申し訳ございません。いつも連絡をしようしようと思っていたのですが、忙しいと甘え、怠っておりました。申し訳ございません。「常時英心」も毎日アクセスして学ばせて頂いております (Hageo先輩のご講演も参加させていただきたかったです)。また、時間を見つけて拾った表現を書いていきたいとも思います。末筆ではございますが、どうかお身体にはお気をつけ下さい。(Othello