常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

27個のアウト

うっとうしい梅雨の季節となって参りましたが、いかがお過ごしでしょうか?

報告が遅れてしまって大変申し訳ございません。長文になってしまいますが、ここまでの2カ月の経過を報告させていただければと思い、メールを送らせて頂きました。

国際部という分掌に配属されました。留学エージェントと旅行代理店と帰国生入試の仕事を足したような仕事内容です。大変ですが、僕にとっては仕事の充実感しかありません。

授業は、試行錯誤の繰り返しです。トップの高校であるトップの先輩方の授業見学をさせてもらい、早く自分自身の型ができるように、死に物狂いで頑張っていくつもりです。

今回、主に報告させて頂きたいのが部活動です。野球部の顧問になりました。僕自身、とある私立中高で6年間野球をやっていました。口癖のようにいつも監督が言われていたのが、「ボンボンにだけはなるな!」でした。(この場合のボンボンは、根性がなく、苦しみを知らず、一つのことをやり通す気力のない人のことです)

進学校で練習時間も限られていましたが、この監督の言葉と、仲間との努力で、東東京ベスト8まで進みました。教師としてボンボンを更生したいという僕にとっては、まさにこの高校で野球部の顧問はうってつけでした。理由は、これから説明します。

4月当初、部活の様子をキャプテンから聞いた時には驚きました。部員は9人に満たず、毎大会、他の部活から助っ人を借りている状況です。2、3年は真剣にやりたい思いが強いが、以前、厳しい練習についてこれない生徒が大量に辞めてしまった経験がトラウマとなり、「ラクだから入って」という理由でしか新入部員を勧誘できない状況、厳しい練習を強いることができない状況、顧問が多忙で去年の8月から1度も練習に来ない、春の大会は26−0のコールド負け…。

この状況を知り、この野球部を絶対に変えてやろうと思いました。高校野球ができるのは人生で一度きり。高校で好きな野球に打ち込めないようでは、これから先の人生で何があっても努力ができない。そんな生徒にはなってほしくないのです。4月の教員歓送会で、全教員の前で高らかに宣言しました。「今年の夏、野球部を必ず初戦突破させてみせる」と。反応は冷ややかでした。「無理。」「コールド負けにならないのが目標。」「まず、部員を集めなさい。」悔しかったです。

「練習には毎回出る。俺がサポートする。土日の練習だって出る。」初回の練習でそう言った時、部員たちの目が輝きました。よほど、顧問が部活に来てくれるのが嬉しかったのでしょう。(部活に顧問が来るのが当たり前だと思っていた僕は、今でも「お忙しい中、練習に来てくれてありがとうございます。」と言っている主将がかわいそうで仕方ありません。たとえどんなに忙しくても、顧問として、人生の先輩としてしっかりとサポートをしたいから、そんなこと言わせたくありません。)

最初は疑心暗鬼だった生徒も、日が経つごとに、僕のことを信頼してくれるようになりました。2,3年生だけを集めてミーティングもしました。「楽しくやりたいのはいいが、苦しくても真剣にやれば楽しいん じゃないか?今の部活を見てると楽しみ方も真剣さも中途半端にしか見えない。1年生の顔色を伺いながら野球をするのは、誰にとってもつまらないと思う。これから先、好きなことにたった3年間も打ち込めなきゃこれから先の人生も同じことの繰り返しだよ。」これを説き続けました。

雰囲気も変わり、真剣に厳しい練習に取り組み出しました。1年生も厳しい練習で達成感を覚えるようになりました。「よくなってきたんじゃない?」と声をかけてくれるなど、だんだんと教員たちの野球部を見る目も変わってきました。雰囲気が変わったのを見て、弱小野球部に入るつもりはなかったという野球経験者も入部し、今では部員数13人です。

そんな野球部が今日、実に1年ぶりとなる対外練習試合を経験しました。結果、負けてしまいましたが、非常に野球らしいゲームができました。ゲームセットの瞬間には涙が出そうになってしまいました。試合後のミーティングでは、技術的・精神的な反省点を洗い出し、最後に思ったことを言いました。「この試合が、このチームが結成されてからの最初の試合でした。チームが一丸となって取ったこの27個のアウトは、僕らにとって、栄光への、ささやかだけど偉大なる第一歩です。この27個のアウトを忘れずに、夏へむけて練習していきましょう。」本心でそう思いました。

この高校で、野球部で、僕自身も成長しながら、生徒の人間教育をしていきたいと思います。

蒸し暑い日が続いておりますが、お身体ご自愛下さい。
長文失礼いたしました。

更正した北千住の元帝