常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

boudoir

学部生の時にUG先生にご紹介して頂いた岡倉天心の名著The Book of Teaを読み返しました。読んでいたら、以前気が付かなかったところを発見しました。

It has permeated the elegance of noble boudoirs, and entered the abode of the humble. (p. 4)

赤字のboudoirは、多くの辞書では「婦人の私室」と訳されますが、この解釈ではこの箇所は読めません。そこでOEDを引いてみると、“A small elegantly-furnished room, where a lady may retire to be alone, or to receive her intimate friends.”と定義されていました。やはり、誤使用か、と思っていると次に“Formerly sometimes applied to a man’s private apartment.”と添えられており、確認すると少なくとも18世紀後半から19世紀半ばまでは、「男性の私邸」としての意味が用いられていたことがわかります(c.f. William Hayley, The Triumphs of Temper)。語弊はあるかもしれませんが、ここでは家は男性の所有物であった日本の歴史を考慮して、「邸宅」として捉えることができます。ここでは「婦人の私室」じゃあいけなかったのです。

試訳をしてみると「[茶道]は気品溢れる屋敷の上品さに染み渡り、質素な長屋にまで行き届いている」という具合になるかと思います。

岡倉天心がどのような書籍を使ったのかについては、私は勉強不足のため存じませんが、どのような本や文献を読んで学んだのかなあ、と妄想すると胸が熱くなります。(Othello)

c.f. much ado about nothing - 田邉祐司ゼミ 常時英心:言葉の森から