常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

a bad apple

昨日の記事の続きです。採り損ねた表現がまだありました。
ソースはこちら。以前の記事はこちら

(前略)
Yet businesspeople have given little serious thought to managing dishonesty. Managers tend to make two hoary contradictory assumptions. First, that there is a sharp line between good and bad apples, and that a manager’s job is to toss out the bad. Second, that everybody cheats if they have the right incentives and the wrong oversight, so managers must ensure that punishment is sure and swift.
(後略)

赤字で示したthere is a sharp line between good and bad applesの意味が良くわかりません。まず、there is a sharp line between〜ですが、こちらは簡単。このlineは、そのまま「線」や「境界」を表します。つまり、「○○と■■の間にはハッキリとした境界線がある」という意味になります。

このthere is a line betweenの形は頻繁に見かけます。グーグルで検索してみると、約 12,000,000 件もの例が出てきました(完全な形で検索するときは“”で括る)。少し例を挙げると、There's a fine line between genius and insanity. There is a line between responsibility and obligation.などがあります。

続いて、『リーダーズ英和辞典』でbad appleの意味を確認してみると、「ほかに影響を及ぼすもの;癌」とあります。念のため、Collins English Dictionaryで意味を確認してみるとbad appleで“a person with a corrupting influence”とあります。これで、この文の意味はわかりますね。「良い影響と悪い影響を与えるものには明確な違いがあって、経営者の仕事は悪い方を取り除くこと」です。

しかし、わからないことがひとつあります。なぜbad appleが「ほかに悪影響を及ぼすもの」になったのか。リンゴと聴くとキリスト教的な「アダムとイヴの堕落の原因になった禁断の果実;Forbidden fruit」やギリシャ神話における「トロイア戦争の原因となった;Golden apple」を連想します。そこで、三省堂の『英語イメージ辞典』を調べてみると、appleの項目に次のような表現がありました。“One bad apple spoils the bunch. (ひとつのリンゴが腐ると、みんなダメになる)”、なにやら金八先生を思い出します。さらに“He is a good apple(善玉)”もありました。今回のbad apple、good appleは確実にこの考えを踏まえているのでしょう。

リンゴという果実にまつわる表現は実にいろいろあって大変興味深いと思います。ShakespeareSonnetにも『ヴェニスの商人』や『十二夜』にも、さまざまな意味で使われています。(Othello)