常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

place/ sneeze: シリーズ村上春樹その2

さきほどの記事と同じ引用箇所です。ここでは,別の視点から英語表現を拾います。
I think that’s why I’m attracted to darkness.” As Murakami described this memory, I felt a strange internal joggling that I couldn’t quite place — it felt like déjà vu crossed with the spiritual equivalent of having to sneeze. It struck me that I had heard this memory before, or, eerily, that I was somehow remembering the memory myself, firsthand.
ここで,太字で強調した箇所のjogglingをご覧ください。これは,言うまでもなく他動詞で「軽く揺する」自動詞で「軽く揺れ動く」という意味です。それがinternalにくっついていますから,「何か変な動揺を感じた」ことになります。
そして面白いのは,that以下。シェイクスピアの悲劇Othelloでもplaceはたくさんの意味で使われていますが,ここのplaceも興味深く思えます。結論から申し上げると,これは「思い出す」という意味で使われています(『リーダーズ英和辞典』研究社)。つまり,筆者は村上の話を聞いた時に,なんかよく思い出せないのだけれども,心の中で変な感じの動揺を覚えたということがわかります。
さて,それはどういうことかと言えば,ダッシュ以下です。ここではなぜsneezeが使われているのでしょうか。わたしの持っているどの辞書にある意味では,どうもしっくりきません。そこで想像力をフルに活用すると,おそらくこのsneezeは「思い出す,外に出す」のような意味だと考えられます。まず「くしゃみ」について考えました。くしゃみは,その迷信に,くしゃみをすると魂が外へ出る,というものがあります。記事の場合は,心の中で神秘的で村上の記憶と同じようなものが頭に駆け巡ったと筆者は言っています。それは,前述したように,筆者もなんだかよくわからない。しかし,もしも心が「くしゃみ」をしたら,心の中の奥にある思い出せない記憶を,外に出す(=思い出す)ことができるではないかと思われます。さらに,次の文で,“It struck me that I had heard this memory before, or, eerily, that I was somehow remembering the memory myself, firsthand. ”と,自分にも同じような体験をした記憶があることを述べています。つまり,2つの文の間に,筆者は記憶を思い出したと考えられます。(Othello)