throw their caps over mills and raise the wind
『ウィンダミア卿夫人の扇』(Lady Windermere’s Fan)から英語表現を拾います。
場面は第3幕。ウィンダミア卿の部屋で,男たちが会話をしています。ダンビーは最近の女性たちの傾向を少し大げさに言います。
DUMBY Awfully commercial, women nowadays. Our grandmothers
threw their caps over the mills, of course, but, by Jove, their
granddaughters only throw their caps over mills that can raise the
wind for them.
(Lady Windermere’s Fan, Act 3, 235-238, emphasis adds)
順番が前後しますが,最初にraise the windについて調べます。これは,「《口語》金を工面する,騒ぎを起こす」といった意味です(以下辞書の引用は『リーダーズ英和辞典』研究社)。風には「風に乗ってくる香り,予感,驚き,騒ぎ,きざし」などの意味があり,それをraiseする「4. 集める,調達する,工面する」ことから,「金を工面する,騒ぎを起こす」という意味になったのだと考えられます。本文では,raise the wind for themで「金で騒ぎを起こす」「金の臭い」くらいの意味合いで使われています。
次の強調箇所のthrow their caps over the millsとはどんな意味でしょうか。これは,どの辞書にも載っていません。オックスフォード版テクストによると「throw your caps over windmillを大げさに言った表現である」とあります(Raby, p. 322)。ここでわざわざmill(工場)が使われているのも,ダンビーの台詞の最初に“Awfully commercial”と商業に関する言葉があるからでしょう。
それでは,このthrow your caps over windmillについて調べてみます。辞書によるとthrow your caps over windmillは,「無鉄砲な振る舞いをふる,伝統に反する」とあります。たしかに風車(windmill)に帽子(caps)を投げ入れるのは,無謀な挑戦です。
台詞を訳してみますと,「近頃の女共は,まったく商売じみているよ。俺たちのばあさん達は/ 無鉄砲なことをしたもんだけど,そりゃもちろん,しかしだ,ああ,その/ 孫娘たちは金の臭いがした時にだけしか/ 無鉄砲な振る舞いはしないんだ。」となります。ここで言う,「金の臭い(raise the wind)」とは,おそらく結婚のことでしょう。つまり,階級的な位が高く,収入が多い人のところに女性が集まることについて皮肉を言っているのだと考えられます。(Othello)