常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

be worn to a shadow

オスカー・ワイルドの『ウィンダミア卿夫人の扇』(Lady Windermere’s Fan, 初演1892年)を改めて読みました。今回は,ここから英語表現を拾います。
場面は第2幕。ウィンダミア卿の屋敷のダンス・ホールです。ベリック公爵夫人にアーリン夫人との関係や女遊びが過ぎていると疑われているオーガスタ卿(べリック公爵夫人の兄)は,うつろな表情でウィンダミア卿に話しかけます。
LORD AUGUSTUS [Coming up to LORD WINDERMERE.] Want to speak to
 you particularly, dear boy. I'm worn to a shadow. Know I don't
 look it. None of us men do look what we really are. Demmed
 good thing, too. What I want to know is this. Who is she? Where
 does she come from? Why hasn't she got any demmed relations?
 Demmed nuisance, relations! But they make one so demmed
 respectable.
                   (Lady Windermere’s Fan, Act 2, 62-68, 強調筆者)
さて,強調箇所のbe worn to a shadowとはどんな意味でしょうか。ここでは「体も心も疲れてうんざりしている」という意味合いで使われています。以前にもwearは,「vt 弱まる,疲れる」(以下すべての引用は,『リーダーズ英和辞典』研究社)という意味で登場しました。場面と照らし合わせると,おそらく「疲れている」だと解釈できます。そして,辞書でshadowを調べてみると例文に “She is worn to a shadow(影のようにやせ衰えている)”とあります。つまり,ここでは,亡霊(shadow)になるくらい,精神的にまいっていることがわかります。かなり誇張した表現です。
ちなみに,本文のdemmedとは,注によると「これは “Egad(「《英古》おや,まあ,なんだ,ヒェー,いやはや」)!”のように使われ,オーガスタ卿をおかしな古風な人,と同時に年配の好色な道楽者に仕立て上げている。」とあります。また,demmedはdamnedと同じ意味で使われており,オーガスタ卿の台詞によく登場します。ある種の口癖のようなものです。(Othello