常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

stir hopes

福島第1原発では,配線をもう一度つなげて正常に機械を作動させようとしています。しかし,そこには様々な障害が待ち受けているようです。
The restoration of electricity at the plant, the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, stirred hopes that the crisis was ebbing. But nuclear engineered say some of the most difficult and dangerous task are still ahead – and time is not necessarily on the side of the repair teams. (International Herald Tribune 03/25/11より)
今回注目するのが,stirred hopes that crisis was ebbingの日本語訳です。直訳ですと,「危機が引いていくという希望をかき混ぜた」というわけのわからない文章になってしまいます。
stirは液体などだけではなく人の感情をかき混ぜる,つまり人を扇動したり,人の感情を動かしたりという時に使える単語です(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。ebbはcrisisと合わせると「危機が去っていく」と解釈できるでしょう。ちなみにこのebbは大津波を意識してのword choiceでしょうか。そして次の文の先頭に来ているButにつなげるように訳すと,太文字箇所は「危機が去っていったというのはぬか喜びだったようである。原発の技術者は…」のようになるかと思われます。
実は,この文章は今日田邉先生に研究室で紹介していただいたものです。日本語訳が当たっているかどうかは分かりませんが,英語のこのような表現は,non nativeにはちょっと思いつきませんね。(ゼミ生 persimmon柿生)